リサーチ・アイ No.2023-085
最近の本邦社債市場の動向と注目ポイント ~ 金利環境の変化を社債市場の活性化の契機に ~
2024年02月15日 内村佳奈子
2023年の国内企業の社債発行額は、14.9兆円と前年比+24%増加し過去3番目の規模に。イールドカーブ・コントロールの運用柔軟化など、日銀の金融政策修正に向けた動きがみられるなか、金利先高観を受けた前倒しの発行需要が増加。業種別にみると、製造業、銀行業、その他金融業の上位3業種で発行総額の約5割の水準。
調達金利、期間別にみれば、前年と比較して高金利、長期年限での発行が増加。国債金利の上昇に伴い、社債金利も上昇したほか、国内での本格的な利上げ前に前倒しで資金調達を行う動きが増加したことで、調達期間が長期化し、それが調達金利の上昇にも直結。
社債市場の新たなトレンドとなっているのが、環境問題や社会課題への対応を目的としたESG関連の社債発行の増加。グリーンボンドやソーシャルボンドをはじめとするESG債の発行額は、2023年に4兆円超に達し、過去最高額を更新。社債市場全体に占める割合が3割に迫るなど、プレゼンスは一層拡大。
2024年の本邦社債市場を展望すると、国内の金融政策の正常化観測を受けて、旺盛な発行需要が引き続き見込まれる状況。もっとも、米国等と比較すれば、依然としてわが国社債市場の規模は小さく、企業の資金調達手段の多様化に向けて社債市場の一段の活性化が重要。金利環境の変化を契機に、関連業界においては、顕在化しつつあるESG関連の発行ニーズのさらなる掘り起こしや、デジタル社債といった新たな取り組みの積極化が望まれる。
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