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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.24,No.92

ASEAN諸国における金融デジタル化の進展状況 ―クロスボーダー決済、CBDC、暗号資産を中心にー

2024年02月07日 清水聡


ASEAN諸国のフィンテックの進展状況をみると、決済、オルタナティブ融資、暗号資産、資産運用などが、近年の投資の主体となっている。モバイル決済やデジタルバンクなどの一層の広がりが予想されるとともに、ブロックチェーン技術の活用が、決済を中心とする金融サービスなど多くの分野で拡大することが期待される。

クロスボーダー決済の整備は、長くASEAN金融統合の重要なテーマとなってきた。現在は、各国のリテール即時決済システムの連結、QRコード決済の連結が2国間で進められつつある。従来のクロスボーダー決済(送金)は迅速性に欠け、コストも高かったことから、その改善はグローバルな課題とみなされ、2020年以降、G20の依頼を受けてBISがこれに取り組んでいる。

クロスボーダー決済の改善策の一つとして、各国が今後発行するであろう中央銀行デジタル通貨(CBDC)に相互運用性を持たせる枠組みを作ることが検討されている。ASEAN諸国でも、シンガポールやタイが中心となって複数国の中央銀行がプロジェクトを作り、CBDCを用いた資金や証券の決済に関する様々な実験が試みられている。

ASEAN諸国では、人口の年齢構成が相対的に若くテクノロジーに対する理解力が高いこと、一方で金融包摂が途上にあり、新規の金融商品を受け入れる余地ないし必要性が大きいことなどが、暗号資産を受け入れる背景にある。こうした背景の下、各国において暗号資産の利用はある程度浸透してきている。各国金融当局の姿勢は少しずつ異なるが、基本的には金融リスクの抑制とイノベーションの促進の両立を図っている。

フィンテックの進展には、様々なベネフィットとリスクが伴う。暗号資産は特にリスクの高い分野と考えられることから、規制のあり方を十分に議論したうえで、CBDC、ステーブルコイン、セキュリティトークンなどの健全な発展を促していくことが望ましい。暗号資産に対する規制監督のあり方としては、リスクに慎重に配慮しつつ、ステーブルコインを中心にイノベーションの可能性を探るスタンスが適切であろう。こうした形での金融のデジタル化が、域内の経済発展を加速させるとともに、国際的な金融デジタル化の進展や国際金融システムの安定などに資することが期待される。

金融デジタル化の今後の可能性の一つとして、ブロックチェーン技術のさらなる活用が考えられる。金融分野での活用の柱となりうるのは、CBDCや暗号資産に加え、それ以外のより幅広い資産のトークン化である。資産のトークン化は、証券・商品・実物資産(不動産など)の取引への人々のアクセスを容易にする。個人や、証券の発行体である企業(特に中小企業)が金融にアクセスしやすくなり、金融包摂が進展する効果をもたらす。今後、活用事例が広がることが期待される。

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