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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.24,No.92

中国の不動産危機と地方政府債務危機 ―政策リスクにより低下する標準シナリオの実現可能性―

2024年02月07日 三浦有史


中国経済をけん引してきた不動産開発業は転換点に差し掛かっている。背景には、販売面積と販売額が2年連続で減少し、不動産開発企業のレバレッジ経営が行き詰まったことがある。債務削減を促す3つのレッドラインを意味する「三道紅線」の達成状況を見ても、不動産開発企業にもはや財務体質の健全化を目指す余裕はなく、債務返済のための資金を確保することに追われている、というのが実情である。

一方、広義の政府債務残高は増加を続け、2027年にGDP比147%に達する見込みである。地方融資平台(LGFV)の債務増加ペースは非常に速く、政府債務はもはや「コントロール可能」な水準にあるとは言えない。LGFVがデフォルトを起こさないのは政府が銀行に支援を要請しているためで、そのしわ寄せは中小銀行に向かう。国際通貨基金(IMF)は、中小銀行の多くが資本不足に陥ると予測する。LGFVの多くは既に「存続不可能」であり、現在のLGFV救済策はいずれ破たんする。

住宅市況の悪化を受け、政府は不動産開発企業に対する銀行融資枠を設定する資金繰り支援策や、富裕層に複数の住宅保有を認める「認房不認貸」といった需要刺激策を打ち出した。しかし、住宅市場は需要の減退が不可避であるため、一連の政策は中国経済により大きなショックをもたらす、リスクの高い政策と言える。

習近平政権は、城投債を地方政府債に交換させる「置換債」の発行とともに、中小銀行に資本を注入する「中小銀行専項債」の増発を認めるなど、2023年に入りLGFV救済における中央政府の関与を強めた。しかし、この救済策も持続不可能であり、LGFV、地方政府、銀行のモラルハザードを助長するだけに終わる可能性が高い。

不動産危機の問題は、不動産開発企業のデフォルトが増えていることではなく、デフォルトが増えているにもかかわらず、破産法に基づく破産・再編手続きが進められている企業がないこと、そして、地方政府債務危機の問題は、LGFVがいつデフォルトを起こすかではなく、デフォルトに陥ってもおかしくないLGFVが増えているにもかかわらず、一向にデフォルトが起きないことにある。

中国経済の先行き不安を高めているのはデフォルトリスクではなく、着地点が見えない政策リスクである。中国経済の下振れリスクはかつてなく高く、経済成長率が徐々に鈍化し、2028年に3.4%に低下するというIMFが示す標準シナリオを実現することが難しくなっている。

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