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ビューポイント No.2023-022

変わるわが国賃金環境と2024 年春闘の課題 ~実質賃金プラス転化の条件~

2024年01月19日 山田久


2023 年の春闘賃上げ率は30 年ぶりの高さとなったものの、実質賃金はマイナス基調を脱せず、企業間格差は拡大。1983 年から85 年前半の「日本経済の黄金時代」の4%台後半から5%程度の水準からすれば、賃上げには一層の引き上げと広がりを期待。

世界経済のフレームワークが大きく変化し、各種コストが上昇傾向をたどる局面に入るなか、物価が上昇することが当たり前の「ノルム」が形成途上。しかし、実質賃金の上昇を伴う経済の好循環形成には、インフレ率は2%程度の緩やかなペースになることが重要で、「単位労働コスト」と「価格転嫁率」が適度な状況に誘導される必要。「単位労働コスト」の適度な誘導には、広がりのある十分なペースでの名目賃金の継続的引き上げと労働生産性の持続的向上が不可欠。要すれば、「名目賃金の引き上げ」「労働生産性の引き上げ」「価格転嫁の適正化」の3点に取り組むことが、望ましい賃上げに向けたアジェンダに。

そうした観点に立てば、人的資本を増やすとともに高生産性部門への労働移動を促進する政府のシナリオでは、短期的に十分な効果をあげることは困難。賃上げには労使交渉という手段もあり、「春闘の再建」こそわが国が取り組むべきメインテーマ。

①政労使会議の定期開催、②産業別・地域別会議体の設置、③第三者委員会の3点セットの実現が具体的な施策となり、とりわけ②が重要。この点で、人手不足が深刻化するなか、人員確保策としての特定最賃を入口にした協力体制の構築が一案。同時に地域全体でのブランドづくりや、企業横断的な人材育成の仕組みづくりに産官学が取り組むべきで、会議体の設置や助成金の支給などには自治体が重要な役割。

生産性向上策としてAIなどデジタル技術活用の重要性は衆目が一致。それを広く付加価値創造のために活用するには多くの従業員の職務内容の転換が必要になり、この点で労使間のコミュニケーションが重要。生産性向上のもう一つのカギは「ダイバーシティー・マネジメント」。働き手の都合で労働時間や勤務場所が選択でき、就業形態や労働時間で差別されない、柔軟で公平な雇用・報酬ルールを確立することで、女性やシニアの活躍余地を大幅に拡大することを期待。


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