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FIP導入1年半が経過して~FIP転換の現状と展望~②

2024年01月11日 段野孝一郎


 前稿(FIP導入1年半が経過して~FIP転換の現状と展望~①)では、FIPの自由度の高さ等から、今後の発展可能性を述べたが、一方でバランシングコストの負担が大きいことも判明してきた。

 資源エネルギー庁がFIP認定事業者(既に運転開始済の変動電源の移行認定案件)に対して調査を実施したところ、発電量予測・予測誤差への対応に要する費用が、交付されるバランシングコストの額よりも高いと回答した事業者が多い状況にある(下記参照)。とりわけ、FIP制度に移行した当初は、特に費用が高くなるとの声があった。

出所:総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会
再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第58回)
資料1「再生可能エネルギーの長期安定的な大量導入と事業継続に向けて,p26


 前稿では、FIP導入量がFIP開始から1年半で約1GWという数値を記載したが、資源エネルギー庁としても、この数値を一層拡大していく必要があるとの認識であり、その障壁の1つと見なされるバランシングコスト補填については早期に見直しを図る構えを見せた。

 具体的には、以下の見直し案が議論の俎上に載せられた。
①FIP制度として運転を開始した事業に交付するバランシングコストについて、運転開始初年度を1.0円/kWhとした上で、2年目、3年目については段階的に低減させ、4年目以降は現行制度において定められた額とする。
②段階的な低減については、1年目から4年目までにかけて各年の低減額が均一となるように額を設定する
③太陽光発電については、2024~2026年度までの3年間にFIP制度として運転を開始した事業に適用する
④風力発電については、2024~2027年度までの4年間にFIP制度として運転を開始した事業に適用する
⑤上記の詳細の検討は、今年度の調達価格等算定委員会において検討が行われる。

出所:総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会
再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第58回)
資料1「再生可能エネルギーの長期安定的な大量導入と事業継続に向けて,p28


 ドイツでは、FIP切り替えとともに、ネクストクラフトベルケ社のようなインバランス管理にたけたVPPアグリゲーターの事業が拡大した。また、そのために再エネ出力予測に特化したさまざまな出力予測サービス事業者も台頭した。その結果、ドイツのFIP電源の8割は何らかのアグリゲーターを活用しているとも言われている。

 FIP認定事業者が自らバランシングノウハウを強化することももちろん重要だが、社会コストの最適化という観点からは、VPPアグリゲーター等を一大産業に育てていくという発想も大事になってくるのではないだろうか。こうしたバランシングコスト補填の改定を通じて、より一層の参入促進を期待したい。

以上

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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