リサーチ・アイ No.2023-072
IMFによるグローバル銀行ストレステストのポイント② ~ 世界の主要行における多額の預金流出への耐性を検証 ~
2024年01月09日 内村 佳奈子
国際通貨基金(IMF)は、2023年10月に公表した国際金融安定性報告書(GFSR)において、各国主要銀行の預金流出への耐性を検証。今春に米シリコンバレーバンクが多額の預金流出に見舞われ破綻したことから、①流動資産のうち現預金による支払い、売買目的有価証券などの時価評価の有価証券の売却により対応可能な預金流出の程度、②上記資産が枯渇し、満期保有債券の時価での売却や同債券を担保とした中央銀行からの借入を行う場合の財務影響を試算。
①については、預金流出率が10%程度までは概ね全ての銀行が対応可能。もっとも、流出率が10%を超えると対応できない銀行が増え始め、40%まで上昇すると世界の半数以上の銀行で現預金や時価評価の有価証券が枯渇。国別でみれば、25%の預金流出に対応できない銀行の割合が、韓国では8割以上、サウジアラビアでは6割以上である一方、日本は2割未満にとどまっており、邦銀の預金流出への耐性の高さが目立つ格好。
また、②については、満期保有債券を時価で売却する際の売却損失を受けた自己資本の減少影響よりも、同債券を担保に中央銀行から流動性供給を受ける際の調達コストの増加による影響が軽微となるなど、中央銀行のファシリティ機能の有効性が示される結果に。
シリコンバレーバンクの事例のように、利上げ転換時におけるデジタルバンクランのリスクは、国際的な規制・監督当局にとって主要な課題の一つ。今後、国際的な銀行の流動性リスクの大きさを見ていくうえでは、国毎のリスク度合いの違い、中央銀行のファシリティの利用のしやすさ(ユーザビリティ)を考慮する必要あり。
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