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FIP導入1年半が経過して~FIP転換の現状と展望~①

2024年01月04日 段野孝一郎


 2012年4月から導入されてきた再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT制度)は、2022年4月からFIP(Feed-in Premium)制度に置き換わられていくことになった。FITとFIPの違いは、主に以下3点に集約される。

①FIP認定事業者を補助するスキームであること
 誤解されがちであるが、FIT法の支援措置は、FIT認定事業者とFIT買取事業者の間で特定契約を締結し、調達価格で再エネを購入するFIT買取事業者の逆ザヤを防止するためにFIT交付金を支払う、という仕組みである。このため、FIT認定事業者からすると、特定卸供給スキームのような特例を用いなければ、売電先を自由に選ぶことが困難であった。それに対し、FIP制度ではFIP認定事業者に直接FIP交付金(プレミアム)が支払われる。FIP認定事業者はJEPX/アグリゲーター小売電気事業者から売電先を選べるため、PPA等の自由度も大きい。



②バランシングコスト補填分、市場価格よりも割安な電気である
 現状、インバランス管理に精通しないFIP認定事業者に対して参入を促すべく、バランシングコスト補填(2022年度1.0kWh|その後は毎年度漸減)を加味して参照価格が設定されている。そのため、FIP電源から参照価格で買うということは、市場価格よりも割安な電力を調達できるということを意味する。

③環境価値は「非化石価値市場で売れる」前提でFIP認定事業者に帰属する
 参照する価格は「直近4回分の非FIT非化石証書の落札価格」とされている。しかし、エネルギー高度化法の第1フェーズ終了間際の駆け込みを除けば、大量に売れ残りが生じているのも事実。FIP認定事業者にとっては非化石価値も含めて、FIP電源の価値を訴求していくことが必要になる。

 長らくFIP転換の全貌が不明だったが、2023年10月1日時点のFIP導入量が先日、公表された。全電源の合計では275件・約986MW。新規認定・移行認定ともに太陽光発電が最も多いが、新規認定では水力発電、移行認定ではバイオマス発電の利用件数が多い傾向が示された。

 特にバイオマス発電所の利用件数が多い点は、まさにバランシングコスト補填を逆手に取ったものではないかと推察される。一般的に輸入燃料等を活用する大型バイオマスは、保守や灰出し以外の定常稼働時は、ほぼ定格フル出力で運転するため、インバランスリスクはほぼ皆無と言ってよい。このような電源をFIP転換し参照価格で売電することで、FIP発電事業者はバランシングコスト補填分を新たなアップサイドとして訴求し得るし、小売電気事業者側も安定的なベースロード電源が市場価格よりも安価に手に入る等のメリットが見込める。

出所:総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会
再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第58回)
資料1「再生可能エネルギーの長期安定的な大量導入と事業継続に向けて,p21


 発電計画策定のための予測やインバランス管理義務を負わせるFIP制度は、多くの再エネ事業者にとって負担を強いるものであるが、創意工夫によりFIT以上の価値を生み得る可能性がある。今後も事業者のさまざまな工夫によって、多様なビジネスモデル/PPAが生まれてくることを期待したい。

以上

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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