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JRIレビュー Vol.1,No.112

アジア経済見通し

2023年12月26日 野木森稔佐野淳也熊谷章太郎


2024年のアジア景気は財輸出の底打ちを背景に回復が続く見込みである。しかし、①中国経済の低迷、②高金利の継続、③インフレ率の高止まりが重石となり、景気は勢いを欠く展開が予想される。NIEsの成長率は+2.1%、ASEAN 5は+4.9%と前年から上昇するものの、コロナ禍前を下回る伸びにとどまる見通しである。

こうしたメインシナリオに対し、中国の不動産問題が大きなリスクとなる。不動産市場の悪化が長引く場合、金融機関の経営や地方政府の財政が悪化し、金融システム不安に飛び火する可能性がある。金融仲介機能の低下や金融市場の動揺などを通じて、中国経済が深刻な打撃を受ければ、アジア経済全体が大幅に悪化する可能性がある。

また、供給網の混乱もアジア経済のリスクである。中国政府はデジタル化やグリーン化に不可欠な重要鉱物の輸出管理を強化している。仮に、中国政府が禁輸などに踏み切る場合、アジアを含む世界の製造業への打撃が大きい。加えて、供給網の混乱でインフレが生じる可能性もあり、金利上昇などともあいまってアジア経済が後退する恐れもある。

アジア諸国のうち中国では、景気浮揚策で最悪期を脱したものの、不動産不況が引き続き景気の重石になる。2023年の成長率は+5.3%と政府目標をかろうじて達成した後、2024年は+4.4%と減速する見通しである。その理由として、景気浮揚策の効果が一巡するほか、内外需要の自律的な回復力も弱いことが挙げられる。さらに、不動産不況の深刻化や輸出の落ち込みなど、景気下振れリスクが多いことにも注意が必要である。

インドでは、2024年度の成長率が+6.7%と、コロナ禍前を超える安定した成長が予想される。ただし、エネルギー・食料を中心とするインフレの再燃には注意が必要である。また、2024年に実施が見込まれる下院総選挙の動向も先行きの懸念材料となる。現時点では現与党連合が勝利し、企業寄りの政策を重視するモディ政権が3期目に突入する可能性が高いが、家計寄りで企業に厳しい政策を掲げる野党連合への政権交代があれば、成長力を引き下げる可能性もくすぶっている。

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