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JRIレビュー Vol.2,No.113

自律した地域社会実現に向けた地方税改革-求められる自主性と公平性、財政健全化-

2024年01月15日 蜂屋勝弘


地方行政では、地域のニーズに応じた行政サービスが求められるなか、行政サービスに地域差が生じている。コロナ禍での事業者への「協力金」が記憶に新しいが、平時でも、子どもの医療費助成や私立高校就学支援などに地域差がみられる。どの行政サービスを充実させるかは、各地方自治体の裁量ではあるものの、行政サービス全体でみると、受益者である住民に直接課される個人住民税負担がほぼ全国一律であるにもかかわらず、企業からの税収が多い地方自治体の行政サービスが充実する傾向にあり、行政サービスが手厚い地域の住民が、他地域よりも重い税負担を受け入れているわけではない。

わが国では、行政が担う様々な役割のうち、教育、福祉、保健・衛生、警察・消防といった住民に身近な分野の多くを地方自治体が担っているが、ほとんどの地方自治体では、自ら徴収する地方税収だけではその経費を賄うことができない。すべての地方自治体で必要最低限の行政サービスを実施するには、国が必要な財源を保障し、財源移転等によって地方自治体間の税収の不均衡を均す必要がある。

現在の地方財源の問題点として、①国からの財源移転や地方法人課税によって住民の受益と負担の関係が希薄化していること、②地方自治体の課税自主権の実施対象が企業に偏っていること、③行政サービスにおいて住民の選択によらない地域差があること、を指摘することができる。これらを改善する国と地方の税制改革として、①企業の税負担を地方から国に移すと同時に、②個人の税負担を国から地方に移すことが考えられる。

地方財源の問題点に対する上記の税制改革による改善効果をみるために、実際のデータを用いたシミュレーション分析を行うと、①受益と負担の関係の強化、②課税自主権が大きく認められている個人住民税の割合の拡大、③行政サービスの地域差をもたらす税収の地域間偏在の是正、が確認される。

加えて、①税収の地域間偏在が是正されることを受けた地方交付税の所要額の減少、②受益と負担の関係が強化されることによる歳出抑制、といった効果が期待されることから、国全体としての財政健全化にも繋がると考えられる。

近年、税収の地域間偏在是正等の観点から、地方法人課税を縮小し同額を国税に変更する税制の見直しが行われてきた。しかしながら、国税となった税収が、地方交付税や地方譲与税として地方自治体に配分されるため、地方分権の観点からは当を得た対応とは言い難い。地域行政サービスの財源は、受益者である地域住民が個人住民税を中心に直接負担してこそ、真の地方分権と言えよう。

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