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JRIレビュー Vol.2,No.113

ポストコロナのMICE 戦略 -地方圏におけるリモート会議の可能性-

2023年11月24日 高坂晶子


わが国観光は旧に復しつつあるが、コロナ禍がもたらした変化が長く続きそうな分野もある。オンライン、あるいは対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド(以下、両者を併せた場合はリモートと表記)開催が急速に普及したMICEはその代表である。

MICE は、国が観光再興の鍵とする「高付加価値化」と「地方誘客」にプラスの効果が期待される。今後、リモート開催への対応を織り込んだ振興策への注力が望まれる。

現状、共同研究や事業連携につながる人脈形成(ネットワーキング)に適した対面型MICEの良さが再認識される一方、リモート形式も根強い支持を集めている。大規模会場の不在や不便なアクセスにもかかわらず誘致可能なリモートMICEの普及は、地方都市にとって、年間を通して消費単価の高い客層を集客するチャンスといえる。とはいえ、競争環境は厳しく、受け入れ態勢の整備も容易ではない。

ポストコロナのMICE受け入れを図る地方都市には、以下の取り組みが求められる。

第1に、国際標準の受け入れ態勢の整備である。①リモート開催に対応した高機能の配信設備と専門人材を確保する、②窓口を一元化し照会等への回答を迅速化する、③主催者のニーズを汲み、規制緩和などにも柔軟に対応する、等が必要である。

第2に、ハイブリッド会議の参加者が、現地に足を運びたくなるようなコンテンツを提供する。①式典や宴席の会場として、趣ある伝統建築や公共施設を開放する、②付帯プログラムとして、地域特性を活かした体験・視察や観光を盛り込む、等が望ましい。

第3に、MICEの専門人材を育成、確保する。経験談や事例中心の従来型カリキュラムから、体系化された教育プログラムに移行するとともに、世界標準の専門人材であることを認証する国際資格の取得を支援することが必要である。

併せて、MICEを取り巻く社会環境の変化にも対処する必要がある。

第1に、地域社会への配慮を厚くする。コロナの影響で、域外から多数が集うMICEに対して住民が懸念を抱く可能性があり、地元に利益を還元する措置が必要である。

第2に、持続可能性への配慮を盛り込む。誘致やプログラム作成を担当する日本側ホスト、運営を担当するサプライヤーのいずれもSDGsへの意識を高める必要がある。

今後の日本のMICE戦略としては、これまで実績のある大都市が大規模会議の誘致・開催に注力してショーケースとしての役割を果たす一方、地方都市は新たにリモート形式の中小会議の誘致・開催に取り組み、わが国MICEの開催件数を上積みしていくことが望まれる。

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