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JRIレビュー Vol.2,No.113

カーボンサイクル価値評価 後編:「価値創造型カーボンサイクルモデル」の構築

2023年11月20日 瀧口信一郎


カーボンサイクルとは、人間の社会・産業活動により大気中のCO₂濃度を激増させることのない「地表面での新たな炭素循環」である。ただし、排出されたCO₂を地中に貯蔵したり、石油に近い燃料に戻す設備投資を行い、既存プラントを維持するだけであれば、コストの負担を巡って転換は加速しない恐れがある。したがって、コスト視点から付加価値視点に発想を転換し、新たな社会・構造の創出を目指すことが大切となる。前編では、カーボンサイクルの再構築に向けてCCROI(Carbon Cycle Return On Investment)という指標を定義し、カーボンサイクルの価値評価のフレームワークを提示した。後編では具体サイトを想定し、CCROIを用いてモデル検討を行う。

モデル構築にあたっては、石油の供給が激減する新たな素材製造プロセスの想定が不可欠である。CO₂排出源となる産業はもちろんのこと、森林への吸収、海洋への吸収、藻類の活用、家畜・作物の廃棄物や余剰分の活用、化学製品や鉱物製品による工場群へのCO₂の流れが発生する。バイオマスの供給源となる一次産業と、プラスチックを生産する化学メーカーなどの二次産業が連携し、炭素の供給をバイオマス原料とCO₂で行う新たな素材製造プロセスの実現を目指さなければならない。

「価値創造型カーボンサイクルモデル」は縮小社会・資源循環型社会を実現するための新たなプロセスの集合体である。廃プラスチックや一次産業廃棄物を炭素資源にリサイクルするプロセスと高付加価値素材の生産プロセスを組み合わせ、縮小社会・循環型社会に向けた社会価値を生み出し、マテリアル・プロセスイノベーションを起こすことを目的とする。

CCROIの具体的な計算式を提示し、CO₂の利用量を制約条件とし、CO₂削減の価値化と販売収益、自治体の廃棄物処理コスト、リサイクル対策コストの低減を最大化させるアプローチを提示する。

「価値創造型カーボンサイクル」の実現には、「エコシステムの構築」が必要である。新たな資源循環型社会への移行を実現するとともに、地域に新たな雇用を生み出し、経済波及効果を生み出すため、自治体は、多くの参加企業が長期間にわたるプロジェクトを推進する実施主体や運営方法を具体化しなければならない。そのなかで、多様な企業が連携し、CO₂を価値化する「CO₂価値化モデル」を確立していくことになる。

長期にわたり実装モデルを進化成長させるには、実証とプロセス追加によりシミュレーションを繰り返すことが大切である。シミュレーションモデルは、新たな素材製造プロセスを検討するなかでどこに技術のイノベーションのニーズがあるかを検証する基盤となる。

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