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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.23,No.91

アメリカの脱「中国依存」はどこまで進んだか ―GXに不可欠な新たな3品目の登場―

2023年11月09日 三浦有史


ゼロコロナ政策の転換により、中国の生産・物流機能が回復し、アメリカの輸入に占める中国の割合は上昇するかと思われたが、予想に反し一段と低下した。ただし、スマートフォン、ノートパソコン、ルーターなどで脱「中国依存」が進む一方、リチウムイオン電池では中国依存が深まるなど、品目によってその様相は異なる。

2023年1~4月には、アメリカの対中輸入額が減少するとともに、中国の割合が低下する品目が大幅に増えた。これは一過性の現象ではなく、脱「中国依存」の動きが加速する可能性が高いことを示す。アメリカの脱「中国依存」は、製造業の産業集積が相対的に厚いアジア地域(ASEAN諸国、韓国、台湾、インド)によって支えられている。

メキシコ、ベトナム、インドの3カ国からの輸入を品目別にみると、中国を代替していることが明確に読み取れるのはベトナムだけである。メキシコはアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく自動車・同部品の輸入増加によるものである。インドはスマートフォンの輸出が急伸しているものの、輸出産業の集積はまだ薄く、期待だけが先行している。

中国の輸出統計をみると、EVを含む自動車・同部品、リチウムイオン電池、太陽光発電関連製品の輸出が着実に増えている。これらは、脱炭素社会に向けた取り組みを通じて持続可能な成長を目指すグリーン・トランスフォーメーション(GX)に伴い市場が急速に拡大することから、脱「中国依存」の動きを押し戻すと見込まれる。

中国では、この3品目は輸出をけん引する新「三種の神器」と位置付けられている。米政府は輸入規制を設け、それらの輸入を制限しているものの、中国はいずれの産業でも市場規模、生産能力、価格競争力、技術力で他国を圧倒しており、中国なしではGXが進まない状況にある。

欧州諸国は3品目を製造する産業における中国の協力を不可欠とし、アメリカと距離を置く。この結果、アメリカ以外の国・地域では中国依存が深まり、アメリカだけが中国製品がない特異な市場になってしまう可能性が高い。バイデン政権が先端半導体で成功させた、補助金により国内生産能力を増強するという方程式も3産業には当てはまらない。

バイデン政権が中国との対話を模索する背景には、脱「中国依存」に対する米産業界の反発、同盟国との足並みの乱れ、中国の強硬姿勢がある。アメリカを始めとする先進国の課題は、国内産業界、同盟国・友好国政府及び企業の協力を得るため、何を、どのように規制するかというデリスキングの議論を深めることにある。

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