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ビューポイント No.2023-014

第2ステージに突入したマイナンバー制度―トラブルを乗り越え、持続可能な行政サービスの実現へー

2023年11月06日 岩崎薫里


日本で行政のデジタル化を進める最大の目的は、行政サービスを持続可能とすることであろう。人口減少が深刻化するもとで、自治体は厳しい財政状況と地方公務員のなり手不足に見舞われることになる。その一方で、介護や医療など高齢者向け行政サービスや、道路や水道といった社会インフラの老朽化への対応に、一層の財源と人手が必要となる。こうしたなかで行政サービスの量と質を維持するには業務の効率化が不可欠であり、そのための有力な手段の一つが行政のデジタル化である。そして、行政のデジタル化を行うにはマイナンバー制度の本格活用が必須となる。

マイナンバー制度の三本柱のうち、これまでマイナンバーのみが情報連携の形で本格的に活用されてきた。しかし、ここにきてマイナンバーカードが普及し、それに伴いマイナポータルにアクセス可能な人も大幅に増加したことで、ようやく三本柱が揃ったことになり、遅れていた行政のデジタル化も前進に向けた素地が整った。マイナンバー制度の開始以降、マイナンバーのみが本格活用されていた状態を第 1ステージとすれば、現在は三つ揃って本格活用が可能な第 2 ステージに突入したと捉えることができる。

マイナンバー制度の第 2 ステージでは、制度をフル活用し、デジタル行政サービスの拡充および利用促進をいかに図るかが課題となる。国連の「世界電子政府ランキング」1位のデンマークでは、デジタル行政サービスの利用を義務化したうえで免除申請の形でのオプトアウトを許容する政策が採用されている。しかし、日本の現状を踏まえるとそのような手法は採りづらく、デジタル行政サービスのメリットを周知徹底し、さまざまな機会を通じて利用を喚起していくほかない。

デンマークは、行政のデジタル化の過程で多くのトラブルに直面した。日本でも、マイナンバー制度を活用し行政のデジタル化を進めるのは一筋縄ではいかないであろう。各自治体の主体的な関与に加えて、国民の間でその重要性が広く理解されることがポイントとなる。マイナンバー制度に問題が多いのは事実であるが、問題点を改善しつつ、有効活用に向けた取り組みを行っていくことが求められる。

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