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リサーチ・フォーカス No.2023-035

バーゼル委員会と金融安定理事会が示す欧米銀破綻を受けた規制・監督上の論点

2023年10月23日 谷口栄治


本年春に欧米銀が相次いで破綻したことを受け、10月上旬、国際決済銀行のバーゼル銀行監督委員会(バーゼル委)や金融安定理事会(FSB)が、経営破綻の原因と、そこから導出される金融規制・監督上の論点を指摘する報告書を公表。

バーゼル委の報告書では、破綻行の問題点として、リスク管理やガバナンスといった内部管理態勢の不備、ビジネスモデルの持続可能性を挙げたうえで、監督上の論点として、①リスク管理やガバナンス態勢の検証、②中長期的な環境変化を踏まえたビジネスモデルの評価、③流動性リスクの監督、④監督当局の権限強化、⑤当局間の国際連携、等を指摘。
また、規制上の論点として、①デジタルバンクランのリスクも踏まえた流動性規制の見直しのほか、②銀行勘定の金利リスク(IRRBB)、③規制資本の定義(満期保有目的債券の取り扱い、AT1 債の設計)、④バーゼル規制の適用範囲、に言及。

FSBの報告書では、一連の銀行破綻処理について、基本的には納税者負担を回避し、株主や社債権者を含め、銀行界で破綻処理のコストを負担する形になったと評価。そのうえで、破綻処理に関する論点として、①公的部門による流動性支援策の準備、②危機時における戦略オプションの準備、③急速な預金流出時の対応、④ベイルイン(株主や債権者が階層的に損失を負担・吸収するメカニズム)の運用、等を指摘。

国際機関からの指摘を踏まえ、わが国の金融当局として、以下の3点が重要に。
⚫ 一連の銀行破綻は規制の抜本的な見直しの契機とはならない見通しながら、バーゼルⅢ最終化に向けた各国の動向と今回の教訓を踏まえた規制見直しの動きをフォローし、わが国にとって適切な規制になるよう意見発信することが重要。

⚫ 規制の見直しだけで複雑化・多様化する金融リスクを完全に取り除くことは困難であり、内部管理態勢を含めた監督機能を高度化して補完的に活用することが不可欠。また、破綻処理制度の枠組みの実効性を予め検証することも必要。

⚫ 今回の銀行破綻時に各国当局が連携することで金融システムへの影響を軽減したように、今後は、銀行にとどまらず、証券、保険、ノンバンクセクター、FinTech事業者、暗号資産事業者など、様々な領域での当局間の国際連携が不可欠に。


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