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エフェクチュエーション 不確実な状況へのアプローチ手法

2023年10月24日 小野寺友基


 料理をする際、強いて言えば、あなたはどちらのタイプだろうか。
① 冷蔵庫にあるもので、何を料理するか決める
② 何を料理するか決め、必要な材料を買いにいく

 筆者は普段、料理サイトを見て、何を料理するかを決め、スーパーマーケットで必要な材料を調達し、マニュアル通りの調味料を入れ、料理を完成させる。目標とした料理を間違いなく作るためだ。

 さて近年、「エフェクチュエーション(effectuation)」という意思決定理論に注目が高まっている。現在バージニア大学のビジネススクールで教鞭をとるSarasvathy氏が、「優れた起業家に共通する意思決定プロセスを体系化したもの」である。
 同氏は、目まぐるしく変化する外部環境など、不確実性が高い状況の中で、優れた起業家はどのような意思決定をしているのか、以下の5つの原則にまとめた。

 優れた起業家の行動様式について、その資質、置かれた環境、意思等の抽象的な要素で語られることが多かったこれまでに対し、エフェクチュエーションでは5つの原則として体系化し、学習可能とした点が新しい。また同氏は、エフェクチュエーションの対比として、「コーゼーション(causation)」を挙げる。これは現代経営学の主流の考え方であり、①行動を起こす前に綿密な市場調査を実施し、達成すべきゴールを定める。②そのゴールを達成するために必要な最適な計画(資金・人員計画)を練り上げ、実行に移すという進め方である。

 早稲田大学イノベーション・ファイナンス国際研究所所長の樋原 伸彦氏は、「大企業こそ、エフェクチュエーションの視点を取り入れるべき」と言う。企業における新規事業創出や新商品・サービス開発といった不確実性が伴う取り組みにおいても、優れた起業家の意思決定プロセスの適用は大いに参考となるだろう。

 当社の創発戦略センターは、社会インキュベーションを野心として掲げ、研究員がさまざまな新市場創造に向けて動いている。常に不確実性との闘いである。筆者は現在、当社の研究員と出向元の銀行員を兼務しているのだが、両組織の市場創造にかかるアプローチの違いが面白い。

 冒頭にあげた料理の話は、前者がエフェクチュエーション的、後者がコーゼーション的な行動となる。どちらが良い・悪いということではない。状況に応じて変わる。筆者はエフェクチュエーションとコーゼーションの両利きであることが重要であると考える。普段から自分自身がどちらの考えで行動をしているか認識し、次はいつもと違う行動をしてみることで、認知の幅を広げることに努めてみたい 。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。


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