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リサーチ・フォーカス No.2023-031

中小企業金融の機能強化に向けて求められる融資慣行の転換

2023年10月16日 谷口栄治


わが国ではこれまで、中小企業金融における融資慣行として、経営者保証や不動産担保を徴求。しかしながら、①企業セクターの資金余剰主体への転換と経営課題の多様化、②非製造業中心の産業構造への移行、③企業の新陳代謝の必要性の高まり、等を受けて、個人保証や不動産担保に依存しない融資慣行への転換が必要に。

経営者保証の見直しについては、「経営者保証改革プログラム」が策定され、金融機関に対して、保証徴求時の説明義務等を強化。また、担保法制の見直しについては、無形資産(事業ノウハウ、顧客基盤、知的財産等)を含め、事業全体を包括的に担保権の対象とする「事業成長担保権」が創設される見込み。

金融機関サイドでも、顧客の事業性を評価した融資を促進する動きあり。なかでも、商工中金は、事業性評価や課題解決型提案業務の強化を重点分野として掲げ、経営者保証なしの融資比率が2018 年度末の36%から2021 年度末に61%に上昇するなど、金融界で先鞭をつける存在に。

今後は、中小企業の前向きな経営、創業や事業承継の円滑化を促進するために、以下の3点に留意のうえ、官民が一体となって融資慣行を転換させていく必要あり。
① 制度の周知・利便性向上
政府広報に加え、金融機関、商工会議所、会計士・税理士等が連携して、新たな制度の概要や求められる要件といった情報発信に努めるとともに、事務手続きや業務プロセスの標準化等によって利便性の向上に取り組むことが重要。

② 金融機関の目利き力向上

金融機関は、事業成長担保権の導入に先んじて、事業性評価の能力を高めるための人材育成、商取引データや入出金情報といったオルタナティブデータの活用等を通じて、リスクテイクの能力を高めていく必要あり。

③ モラルハザードの抑制
監督当局は、不適切な取引が発生しないよう、債務者実態把握のプロセスや精度、顧客折衝を含めた実務プロセスや期中管理、ガイドラインなどを多面的かつ的確にモニタリングする必要。


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