リサーチ・フォーカス No.2023-030 ノンバンクセクターが抱える金融リスクへの対応 ~ 流動性ミスマッチへの規制対応を中心に ~ 2023年10月06日 谷口栄治リーマン危機後、銀行に対する規制強化や過剰流動性下の投資マネーの膨張等を受けて、年金基金、保険会社、投資ファンドをはじめとするノンバンクセクター(Non-Bank Financial Intermediation:NBFI)の資産規模が拡大。NBFIの台頭は、企業の資金調達手段の複線化・多様化といった恩恵をもたらす一方、NBFI に起因する潜在的な金融リスクも増大。なかでも、調達と運用の期間の違い(流動性のミスマッチ)を構造的に抱えるオープンエンド型ファンドでは、投資家からの資金償還要請に応じて保有資産の投げ売り(fire-sale)を余儀なくされ、金融市場の混乱を助長するリスクが指摘されるところ。このようなリスクに対し、金融安定理事会(FSB)は、①ファンドの保有資産の流動性に応じたリスク管理、②解約時における投資家へのコスト賦課、といった規制の整備を提言。また英国では、イングランド銀行(BOE)が、NBFI セクターも含めた金融システム全体を対象に、金融市場混乱時の流動性の需給状況等を検証するストレステストを実施するなど、各国当局でもNBFIへの規制・監督を強化する方針。NBFIセクターに対する規制強化に向けた機運が国際的に高まるなか、わが国の金融当局や金融機関としては、以下の2点が重要に。①わが国におけるNBFIセクター関連リスクの検証わが国では、間接金融主体の金融システムの構造が変わらず、NBFIセクターのプレゼンスは限定的ながら、本邦金融機関と海外NBFIとの関わり、とりわけ投資ファンドに対するエクスポージャーやリスクテイクの状況把握に努めるべき。また、主要国における規制強化やストレステスト等について、海外金融当局との意見交換を重ね、わが国への波及リスクを動態的に検証する必要。②資金調達手段多様化の観点からのNBFIセクターの活用一方で、突発的な資金需要への対応力強化や、スタートアップやミドルリスク領域への資金供給円滑化、安定的かつ複線的な資金供給チャネルの提供の観点から、ファンド等を介した適切なリスクテイクのあり方を模索していく必要。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)