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リサーチ・フォーカス No.2023-023

金融システムの安定性向上に求められる 金融機関の内部管理・収益力強化 ~スイス大手行Credit Suisse の救済買収から学ぶべき教訓~

2023年09月08日 谷口栄治


本年3月、スイス大手行UBS は、競合のCredit Suisse を救済買収すると公表(6月に完了)。リーマン危機後初めて、グローバルバンクが経営難によって統合される事態に。

Credit Suisse 救済買収に至るまでの経緯を振り返ると、米国における中堅銀行の相次ぐ経営破綻が契機となったが、その背景には、①リーマン危機後の戦略転換の遅れ、②リスク管理、ガバナンスといった内部管理不全(不祥事の頻発)、③(①や②を受けた)クレディビリティの低下(預かり資産の減少、株価下落)、④危機発生後の流動性の枯渇、といった同行の経営上の問題が存在。

救済買収に至るまでの経緯やその背景等を踏まえれば、わが国金融機関や金融当局として、以下の4点が教訓に。
① 内部管理やガバナンスの不全は経営危機に直結
Credit Suisse では、リスク管理の失敗や不祥事の頻発といった内部管理の不全が経営危機に直結。金融当局としては、リスク管理やコンプライアンス遵守状況、ガバナンス機能の実態など、内部管理に関する監督を強化する必要あり。

② 収益力強化がレジリエンス強化の要諦に
Credit Suisse と同様、過去に経営難が指摘されていたDeutsche Bank は、投資銀行業務の縮小や人員削減等の抜本的な改革により競争力を回復していたため危機を回避。危機への耐性の基盤として、本業の収益力強化は不可欠。

③ 外形的な財務指標の過信は厳禁
Credit Suisse は、普通株等Tier1 比率(CET1 比率)等の健全性指標が良好だったにもかかわらず、経営危機に直面。金融機関の健全性の監督にあたっては、外形的な財務指標を過信せず、リスクの検証を行う必要あり。

④ 危機対応時の異例の措置は将来に禍根を残す恐れ
Credit Suisse 救済買収にあたっては、株式が無価値化しないなか、AT1 債が減損されたことで、投資家から法的措置が相次ぐなど、混乱長期化の恐れ。また、破綻処理ではなく、救済買収となったことで、危機時には、政府関与のうえで救済され得るといったモラルハザードにつながるリスクも存在。

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