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JRIレビュー Vol.7,No.110

カーボンサイクル価値評価 前編:フレームワーク

2023年08月31日 瀧口信一郎


脱炭素は、二酸化炭素排出削減、再生可能エネルギーとして一面的に捉えられることも多いが、化石燃料という有限な炭素資源を掘り出す一方でなく、地球表面で炭素資源を安定的に循環させる「カーボンサイクル(炭素循環)を再構築すること」と捉えるのが正しい。

2050年に二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルが政府目標になったことを受け、生き残りをかけて素材・エネルギー企業は、排出したCO2を利用して素材・燃料を生産するカーボンリサイクル(炭素再利用)技術の開発を加速している。しかし、カーボンリサイクルの視点だけでは、コスト最小化にばかり関心が集中し、活動が進まない恐れがある。

そのため、カーボンサイクルの再構築による新たな社会・構造の創出を目指し、コスト視点から付加価値視点に発想を転換することが大切となる。日本は世界に先駆けて急激な人口減少に向かい、地域は過疎化で消滅の危機が訪れている。素材産業は、公共工事需要の減少、石油化学プラントのアジア諸国とのコスト競争のなかで、縮小化の一途をたどっており、地下資源の活用に制約がかかるなか、リサイクル推進、地域貢献、技術イノベーション創出といった社会価値を評価する体系を作っていかなければならない。

長期にわたる活動を評価し適切にモニタリングするためには、社会価値創出とその道筋を測るSROI(Social Return On Investment)という指標が参考になる。SROIは、長期にわたる社会課題を解決する活動をインパクト評価の手法を用いつつ、最終的に社会価値として定量化するものである。

SROIの考え方を基に、カーボンサイクルを実現するための評価指標をCCROI(Carbon Cycle Return On Investment)と定義して、その体系化を提案する。CCROIは、カーボンサイクルを再構築するためのインフラ投資を行うことによる社会価値創出とともに、企業としての収益性も併せて実現する指標である。

このフレームワークは、カーボンサイクルの取り組みにおけるインパクト評価と企業ファイナンスという既存の方法論の組合せのため、これまで活用してきた企業価値評価を基にしつつ、社会価値創出に向けた取り組みの評価・検討に活用できる利点がある。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)

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