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ビューポイント No.2023-008

企業は従業員の介護の実態把握を ―仕事と介護の両立支援の土台として―

2023年08月21日 岡元真希子


家族介護者は 650 万人、うち 365 万人は働きながら介護をしている。これは有業者全体の 5.4%にのぼり、2035 年には 460 万人への増加が見込まれる。しかし介護休業等の制度の利用率は 11.6%にとどまり、介護離職者は年 10 万人にのぼる。仕事と介護の両立困難による労働生産性の低下や介護離職による経済損失は年8兆円規模に及び、生産年齢人口が減少するわが国で、その両立支援は喫緊の課題である。

国は雇用主に対して、家族を介護していることを申し出た従業員に介護休業等の制度について個別に周知し、その利用意向を確認することを義務付ける方向で検討を進めている。これは育児休業の取得促進策と同じ方策であるが、留意すべき相違点が2点ある。
第1は、制度利用対象者の把握の難しさである。出産・育児と比べて介護は把握が難しく、約4割の雇用主が従業員の介護の有無について把握をしていない。その結果、対象者に対する制度利用率を算出することができず、制度の浸透度合いや取り組みの成果を測ることが難しい。第2は、制度利用方法の多様性である。要介護者の状態や利用する介護保険サービス、親族間の役割分担などにより休業・休暇・短時間勤務などの制度の活用の仕方も自ずと異なってくる。

介護休業等の制度を必要な人が利用し、介護をしながら仕事を続けていくことを促進するためには、上記のような育児との相違点を踏まえ、介護をしている従業員の状況の把握、制度利用に関する適切な進捗指標の設定と開示、利用事例の蓄積と共有が重要になる。特に、雇用主は従業員からの申告や面談などの方法に加えて、介護費用の補助など社内の福利厚生制度の活用実績を糸口に、介護の実態を把握していくべきである。

介護休業等制度は、仕事と介護の両立を支援する手段にすぎない。必ずしも実態を反映しない制度利用率の高低に捉われすぎず、制度やサービスの適切かつ有効な活用や働き方の工夫によって、介護をしながら働き続けることをいかに実現するかという視点が重要である。

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