コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.23,No.90

中国経済の新たなリスクに浮上した「地方融資平台」 ―城投債の連鎖的デフォルトは起きるのかー

2023年08月10日 三浦有史


リーマン・ショック後の4兆元の景気刺激策が終わり、その副作用に目が向けられるようになると、地方融資平台(LGFV)に対する評価は変わり、LGFVは中国国内でも地方政府の債務統計に反映されない隠れ債務を増やす元凶と目されるようになった。

市場で取引されない資産を対象にした「非標」と称される負債性金融商品のデフォルトは過去最高の水準にある。今のところ、それらはいずれも不適切な資金管理によって返済がわずかに遅れた「技術的デフォルト」とされるが、「実質的なデフォルト」に移行することが懸念される。中国はLGFVの実質的デフォルトを経験したことがないため、それは中国経済を揺るがす新たなリスクといえる。

LGFVの債務を含む中国全体の債務を俯瞰すると、①LGFVが地方政府全体の債務残高を増やす主因となっている、②LGFVが隠れ債務増加の主因になっている、③隠れ債務がもはや「隠れ」という名前に相応しくない規模になっている、④LGFVが広義の企業債務残高を押し上げている、⑤中国経済が国家資本主義色を強めている、ことが分かる。

国際通貨基金(IMF)によれば、中国の隠れ債務を含む広義の政府債務残高は、2027年にGDP比149%と、2008年から114%ポイント上昇し、G20のなかで日本に次ぐ水準となる。潜在成長率の低下に伴い、インフラ投資による景気底上げ効果に対する期待は今後一段と高まることから、隠れ債務が財政の健全性と金融の安定性を脅かす、経済成長の重しとなるのは間違いない。

LGFVは、城投債の新規発行によってデフォルトを回避することが可能である。城投債のデフォルトリスクを総合財政力に対する広義の地方政府債務残高の比率で評価し、その地理的分布を見ると、リスクが高いのは①天津市、②重慶市、③湖南省、④貴州省、⑤江西省の順となる。これらの地域は、2016年時点でLGFV有利子負債残高>総合財政力>地方政府債残高となっており、LGFVへの依存度が高い。また、2022年の土地使用権譲渡収入の急激な減少によって、広義の地方政府債務比率が急上昇した、という特徴がある。

地方政府は、①LGFVが抱える債務があまりにも大きいこと、②LGFVのデフォルトは他のLGFVのデフォルトを引き起こす危険性があること、③LGFVは民営企業の投資を補完する機能を有していることから、格付け会社の予想に反し、何を置いてもLGFVのデフォルトを防ぐとみられる。

中国の政府債務はLGFVが主因となり、今後も増え続けると見込まれる。リスクが堆積することでデフォルトが起きた際のマグニチュードは大きくなるばかりである。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ