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デジタル変革の要諦は“Digital Activation”

2023年07月26日 浅川秀之


デジタル1.0:現状のデジタルトランスフォーメーションの課題
 デジタルやテクノロジーを柔軟かつ適時に経営や事業に取り込むデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の重要性が認識されて久しい。多くの企業でデジタル戦略の策定およびその実行がなされている。しかしながら、デジタル戦略を安易に策定&実行することにより、納得のいく結果につながらないことや、PoC(Proof of Concept:概念実証)から先に進めない、などさまざまな課題が浮き彫りになってきており、“デジタルに振り回される”弊害が指摘されることが多くなってきた。

 デジタルの活用によってプロダクト(製品やサービス)の生産性を高める、もしくはプロダクトそのものの機能性や利便性を高めるといったデジタル変革事例はよく見られる。想定する顧客ニーズにのっとって、デジタルによってプロダクトの高度化や差別化を追求する動きであり、DXばやりが始まって以来、現在でも主流のデジタル変革の考え方である。これを「デジタル1.0」と呼ぶ(既存プロダクトの延長線上もしくは枠内でのデジタル変革)。

 現在においては、デジタル1.0は企業にとって競争上の「必要条件」ではあるが、それだけで他社や新規参入事業者、最近で言うところの“ディスラプター”と戦えるわけではない。デジタル活用によるプロダクトそのものの機能向上や開発効率向上は、活用当初は差別化要因になり得るかもしれない。しかしながら、デジタルそのものの入手障壁が下がっている昨今においては、他社が同様のデジタルを容易に活用することができるため、中長期的な差別化要因にはなりにくい。つまり、デジタルを単に「インストール」するだけでは企業の中長期的な競争力強化にはつながりにくい現状がある。

デジタル2.0:実効性のある新しい戦略の定義
 デジタルによってこれまでにない新たな価値の創出を可能とする、もしくはこれまでにない新たなビジネスモデルを実現する、その結果として経営および事業に新たな成長をもたらすためには、「実効性のある新しい戦略の定義」が必須となる。当該企業の「新しい戦略の定義」のためには、①デジタルの理解(故に、デジタルの本質を踏まえた戦略への提言ができる)だけでなく、②戦略の理解(故に、戦略視点でデジタルがどのように生かされるべきかを提言できる)の両視点が不可欠である。①および②の視点をもった上で実効性のある新しい戦略を定義することが”Digital Activation”に他ならない。



 経営資源を「つなぐ」や「効率化する」といったデジタルのインストールが、DXのゴールではない。企業の本質的な競争力強化のためには、デジタルをインストールするだけにとどまらず、デジタルをアクティベートして新たな成長を実現することが必要不可欠である。その実現のためには戦略に対する深い理解だけでなく、デジタルの本質理解を基に、流行に翻弄されることのない実効性のあるデジタル戦略の定義が求められる。デジタルトランスフォーメーションそのものも変革しバージョンアップさせていかなければならない。




※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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