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JRIレビュー Vol.5,No.108

企業のネイチャーポジティブ実践に向けて(前編) -自然関連インパクト評価ツールの提案-

2023年05月24日 今泉翔一朗


今、「自然を回復の道筋に乗せる」ことを意味する、「ネイチャーポジティブ」が世界的な目標になっている。そして、その実現に向けて、企業の事業活動による自然へのインパクト(影響)評価、および評価を踏まえた事業改善が強く求められている。企業においては、その対応を行うために、追加の負担が生じるだろうが、自社事業や他社事業の改善に資する新事業開発のチャンスがあるともいえる。一方で、自然領域は複雑性が高く、企業単独で事業活動の自然への影響評価を行うことは容易ではない。

事業活動の自然への影響評価を行いやすくする「自然関連インパクト評価ツール」が求められる。自然関連インパクト評価ツールは、事業活動データおよび事業実施地域を入力すると、事業活動と事業実施地域に応じた自然関連の正・負の影響評価が出力される機能を有するアプリケーションである。自然関連インパクト評価ツールが備えるべき要件は、「①個々の企業の事業活動レベル」で、「②県レベル、理想的には市町村レベルの自然を対象」に、「③直接的変化だけでなく自然資本や生態系サービスへの影響、さらにはその先の社会面・環境面での波及的影響」を、「④専門知識がなくても評価できること」である。しかし、これらの要件をすべて満たす企業向けのツールは現時点では存在しない。

自然関連インパクト評価ツールを構築するためには、事業活動と自然関連インパクトの関係性を定義する「自然関連インパクト評価モデル」および、そのモデルにおける情報処理に必要な「自然関連インパクト評価データベース」を構築する必要がある。モデルやデータベースの検討にあたっては、事業活動と自然関連インパクトの関係性について、事業活動と直接的な影響要因の関係、直接的な影響要因と自然資本や生態系サービスの変化の関係、その変化と社会や別の自然への波及的影響の関係、といったように段階を踏んで定義する。これにより、モデルやデータベースの構築に必要となる要素を分解でき、これまで産学官民が培ってきた知見を上手く活用でき、また新規構築もしやすくなる。

自然関連インパクト評価モデル・データベースは、産学官民のこれまでの知見を活用しつつ、構築を進めることを想定するが、ある時点で完成するものではなく、産学官民が連携して、発展させ続けることが必要である。そのための動きを作り出す仕掛けづくりが、モデル・データベースの発展には求められる。

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