コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

JRIレビュー Vol.5, No.108

中小企業によるスタートアップとのオープンイノベーション

2023年05月24日 岩崎薫里、大阪ガスネットワーク株式会社事業基盤部エネルギー・文化研究所 主席研究員 岡田直樹


全国には、地域経済・社会を支える優良な中小企業が製造業を中心に広く点在している。そうした企業であっても、①地域産業の構造変化、②脱炭素の流れ、③デジタル化の流れ、への対応を迫られ、先行き不透明感を抱えている。これらの課題に取り組む外部のスタートアップと連携することで得られるメリットは大きい。スタートアップの持つ技術やアイデアを活用できるうえ、自社の特徴や強みを改めて認識するなど、さまざまな面で刺激を受けるという副次的効果を期待できるためである。

中小企業によるスタートアップとの連携は、地域産業の構造変化(①)と脱炭素の流れ(②)への対応に向けた新規事業開拓、およびデジタル化の流れ(③)への対応に向けたデジタル技術の導入にとりわけ有効である。新規事業開拓では、新たなビジネスチャンス、すなわち、これまで自社と関係がないと考えていた事業領域や、新しく登場した事業領域で自社の製品や技術を活用できる可能性を、スタートアップとの連携を通じて見出せる。また、デジタル技術の導入では、スタートアップと一緒に小さな実験を行いながら、自社の課題解決に適したものを探っていき、ひいてはデジタル・トランスフォーメーション(DX)につなげることができる。

中小企業によるスタートアップとの連携の最大の阻害要因となっているのが、両者の出会いの機会が少ないことである。地方ではスタートアップに対するマイナスイメージが依然として根強いのも、連携の心理的な障害となっている。このため、中小企業がスタートアップとの連携に向けた第一歩を踏み出すには、両者を引き合わせる橋渡し役が重要になる。

最近では、行政、自治体、商工会議所、金融機関などが主催者となって、中小を含む企業とスタートアップを橋渡しする事業が全国で行われるようになっている。そのなかで一定の成果を上げているのが、充実した体制のもとで手厚い支援を行う事業である。①中小企業と接点のある主体、およびスタートアップと接点のある主体の両方が橋渡し役として関与し、協力体制を敷く、②中小企業とスタートアップを単に引き合わせるだけでなく、双方に対してさまざまに支援する、などが行われている。

スタートアップとの連携はどの中小企業でも可能というわけではない。第1段階として自社の経営状態が良好であり、第2段階として経営者に成長意欲や挑戦意欲が高く、第3段階として自社内の経営資源だけではそれらの実現が難しいとの認識がある。それらの段階を経て、第4段階で外部の連携先としてスタートアップに目を向けることになる。また、スタートアップとの連携に踏み切った後も、それを意義ある取り組みにするには、スタートアップの思考方法や行動様式を理解するとともに、スタートアップを対等のパートナーと捉え、スタートアップに歩み寄る柔軟性や、スタートアップとの密な対話が求められる。

中小企業がスタートアップと連携することで、新規事業開拓やDXが即座に実現するわけではないが、何らかの気付きを得るなどの前進が見込める。多様なスタートアップと連携を重ね、少しずつ前進していくことで、やがて目に見える成果が表れ、社内の活性化につながる。また、そうした事例が影響力の大きい地域の中核企業の間で広がるにつれて、地域全体の活性化にもつながっていくと期待される。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ