コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.23,No.89

ASEAN諸国のグリーン・ファイナンスを拡大させるための課題 ―公的部門の役割強化、金融システムの整備、インパクト投資の拡大―

2023年05月12日 清水聡


グリーン・ファイナンスに関しては、推計された資金需要に対して資金供給額が大幅に足りないという認識がなされている。その拡大のための課題は、①脱炭素政策の確立、②関連する制度の整備、③専門性の浸透した金融システムの構築、に分けられる。

新興国における障害は、新興国のインフラ等のプロジェクトに一般的なリスク(政治リスク、マクロリスク、プロジェクトリスクなど)、ファイナンスの観点からみたリスク(キャッシュフローの問題やプロジェクトの規模など)、気候変動問題に関連するリスク(エネルギー供給、技術革新、消費行動など)、などに分けて考えられる。

新興国のリスクは高く、市場の力のみで民間資金を呼び込むことは難しい。そのため、リスク・リターンのバランスを改善する公的部門の役割は非常に大きい。国際開発金融機関(MDBs)などの公的部門がまず十分な資金を供給するとともに、適切にリスクを取り、プロジェクトのバンカビリティを向上させ、より多くの民間資金を集めなければならない。こうした手法はブレンド・ファイナンスと呼ばれ、注目を集めている。

公的部門による多様な制度整備も不可欠である。カーボンプライシング制度の導入は特に重要であるが、化石燃料への依存度が高いASEAN諸国における導入は容易ではない。政治的なリーダーシップが重要であり、また、域内当局間での情報交換や相互支援などの協力も有効と考えられる。

一方、民間部門における金融システムの整備について考えると、ESG債市場の拡大においても、政府やMDBsが様々な役割を果たす。機関投資家や銀行にも、グリーンボンドの発行、多様な普及活動、能力構築など、多くの役割が期待される。また、銀行などの金融機関は、ガバナンスやリスク管理体制を強化し、サステナブル・バンキングを拡大していく必要がある。銀行部門の取り組みにはまだ不十分な点も多く、社内における人材の育成や気候関連の情報開示など、多くの課題に取り組んでいくことが求められる。

インパクト投資はESG投資に類似しているが、投資によって社会的効果(インパクト)を与えることを明確に意識し、これを測定する投資手法であり、グリーン・ファイナンスにも適用することが可能である。インパクト投資は拡大傾向にあるものの、認知度はまだ低く、規模も小さい。ファイナンスの対象となるプロジェクトや企業を正しく選ぶという観点から、インパクト投資を拡大する意義は大きいと考えられる。

根本的には、脱炭素社会に向けた政策を確立することがすべての前提となる。困難な政治・経済情勢の下でも、最善の方策を選択していかなければ、良好な地球環境を維持することは出来ないであろう。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ