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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.23,No.89

中国半導体産業の行方 ―デカップリングと自給戦略の成否―

2023年05月12日 三浦有史


米商務省産業安全保障局(BIS)の輸出管理規制は、近年、半導体産業に集中している。華為技術(ファーウェイ)が業績不振に陥る一方、中芯国際集成電路製造(SMIC)の業績は好調で、規制の影響の表れ方は企業によって異なる。中国は、アメリカの輸出管理規制の影響を受けない半導体の研究開発(R&D)を強化するとみられる。

2015年に発表された「中国製造2025」を受け、中国政府は半導体の自給率を2020年に49%、2030年に75%に引き上げる目標を掲げた。政府は「国家集積回路産業投資基金」などを通じて投融資を促すなど、資金面から半導体産業を積極的に支援した。

しかし、2021年の自給率はわずか16.7%にすぎず、外資企業を除く地場企業だけを対象にすると、自給率は6.6%に低下する。回路幅が狭い高性能のロジック半導体の製造は台湾とアメリカの独擅場である。中国の半導体産業政策は自給率の引き上げはもちろん、微細化技術の確立においても成果を上げることが出来ていない。

世界の半導体企業の売上高に占める中国の割合はわずか7%にすぎない。中国企業が量産可能なロジック半導体の回路幅は広く、最先端から大きく遅れている。中国の半導体産業は、電子設計自動化ツールや回路コンポーネントの設計情報といった設計市場における存在感が薄く、自力で高度化を進め自給率を高める自己完結性を構築していない。

米半導体産業はCHIPS・科学法により半導体製造能力が増強されるものの、それによって国内需要が完全に満たされるわけではないこと、また、中国市場の規模の大きさと成長性を無視出来ないことから、中国と手を切ることが出来ない。

中国は半導体のサプライチェーンの川下部分で重要な役割を果たしている。中国は、半導体を電子機器に組み込む最終組み立て工程で圧倒的な存在感を示し、これを代替出来る国はない。電子機器の部品を生産するすそ野産業の厚さも中国特有の強みである。

最先端半導体製造にかかわる中国企業は八方ふさがりの状態に陥るものの、22ナノメートル以下の半導体は市場の13.0%にすぎないことから、BISの輸出管理規制が引き金となり、中国の半導体産業が失速するとは言えない。中国の半導体企業は最先端半導体とレガシー半導体の棲み分けを意識した製造体制を整えようとしており、規制の枠外で成長を遂げる企業もある。

中国の半導体企業は、①人材不足が顕著である、②産業政策の効果が低い、③半導体の製造コストが相対的に高いといった課題を抱えている。これらの課題を克服しなければ中長期的な成長は見込めない。中国の半導体産業を巡っては衰退論と成長論が入り乱れているが、現状と課題をしっかり掌握し、その行方を慎重に見極める必要がある。

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