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リサーチ・レポート No. 2022-018

コスト・プッシュ型労働移動とリスキリング

2023年03月30日 安井洋輔


わが国では、少子高齢化・人口減少やデジタル化の加速に伴い産業構造が変化している。こうした変化に合わせて、労働者が衰退する産業(職業)から成長する産業(職業)に円滑にシフトすることが、個人の経済厚生およびわが国の経済成長率を引き上げるうえで重要である。

もっとも、わが国において、衰退産業の労働者はどの産業に移る傾向があるのか、また、そうした労働者を受け入れた産業における生産性や賃金はどのような影響を受けるのかについてはあまり分かっていない。そこで、わが国における衰退産業から押し出される形の労働シフト(コスト・プッシュ型労働移動)について、公共事業費の圧縮で建設業雇用が減少した2000年代を対象に中小企業の個票データを用いて分析した。

この結果、わが国では建設業から押し出された労働者は、小売業、卸売業、製造業にシフトしたほか、建設業に滞留した者も多いことが分かった。この間、産業別に生産性をみると、小売業、卸売業、建設業は大きく低迷していたほか、建設業からの労働者の受け入れが生産性や賃金を高めることもなかった。すなわち、コスト・プッシュ型労働移動は、必ずしも低生産性の産業から高生産性の産業への労働資源の最適配置をもたらしていない。

衰退産業の労働者が成長産業にシフトできない背景には、成長産業で求められるスキル・セットを容易に習得できないことがある。こうした状況を改善するには、労働者が今後必要なスキルを身に付けたいと思い、実際に過度な負担を強いることなく習得できるよう、企業による長時間労働の削減やジョブ型雇用の導入、政府や職業教育訓練機関による産業ニーズを反映した訓練の実施や、成長する職業について助言できるキャリア・コンサルタントの育成が求められる。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)

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