コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.23,No.88

人口減少が示す中国経済の近未来

2023年02月13日 三浦有史


2020年に実施された第7次人口センサスでは、想定を上回るスピードで少子高齢化が進んでいることが明らかになった。中国は2022年に人口減少社会に転じるとみられる。少子化が進む原因としては、①出産適齢女性人口の減少、②晩婚化や出産意欲の低下といった結婚・出産を迎える世代の意識の変化、③新型コロナウイルスの感染拡大に伴う結婚や出産の延期、が挙げられる。

都市化や高学歴化によって、結婚・出産を迎える世代が子供を持つことに消極的になり、少子化は一段と加速すると見込まれる。「一人っ子政策」廃止などの産児制限の緩和の効果は一時的である。保育補助金の給付といった奨励策も、出産意欲を刺激するほどのインパクトを持たない。

同一都市内の移動を除く「流動人口」は2020年に3億7,582万人と、4人に1人が移動をしている。「流動人口」が省および都市の人口の増減に与える影響は格段に大きくなった。2020年の人口を2010年比でみた人口の増減率と、2020年の人口から2010年の人口を引いた増減幅というふたつの視点からみると、黒竜江省と広東省は対照的な姿を示し、黒竜江省は、“未来の中国”を映し出す存在といえる。

黒竜江省の成長率は2013年から常に中国全体の成長率を下回り、さらなる減速が見込まれる。中国全体でも成長減速が不可避となるが、若年人口の割合が高いため、減速スピードは黒竜江省より緩やかなものとなる。

黒竜江省の都市職工基本年金保険基金の残高は2016年にマイナスとなった。中国全体の同残高が減少に転じるのも時間の問題である。年金財政は急速に悪化し、最終的に国家財政を圧迫する元凶となる。

人口減少が進んでいる地域ほど、住宅価格の低下が始まる時期が早く、低下幅も大きい。中国の住宅市場は、人口減少によって住宅価格が低下する地方と、人口増加によって住宅価格が底割れしない地方に二極化する。

これから本格化する人口減少は、3期目に突入した習近平政権にいくつかの深刻な問題を提起する。同政権は2022年10月の第20回共産党大会で一強体制を確かなものにしたとされるが、問題はいずれも難易度が高く、その帰趨によっては中国経済の失速を招来し、共産党は存在意義が問われる事態に陥る危険性がある。


(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ