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スマートシティー関連事業における「第三者機関」の設置の提案

2023年01月13日 船田学


 現在、政府や自治体ではスマートシティーに関する多くの施策が実施されています。また民間企業においてもスマートシティービジネスへの参入を企図する企業が増えています。一方で、官民双方の取り組みにおいて、実証実験で終了し、社会実装にまで至らないケースが多い点が課題として指摘されています。
 このような指摘に対して、スマートシティーに関する取り組みに多数関わってきた立場から、以下のように考えます。

 第一にスマートシティーに関する取り組みは、そもそも社会実装の壁が高いという認識を持つことです。実証実験から先に進めないケースが多いのは、日本国内の取り組みに限ったことではなく、世界各国での取り組みにおいても同様のことが言えます。経験から言えば、10個のプロジェクトのうち社会実装にいたるのは、うまくいって1つから2つ程度と言えます。この社会実装に至らないこと自体を批判してしまうと、スマートシティーへのチャレンジが委縮してしまうため、適切ではありません。

 第二に、重要なのは成功事例よりも失敗事例の分析です。成功事例の成功要因分析も有効ですが、実際にはさまざまな要因が重なっていて、かつ「運」や「タイミング」も影響しますので、再現性は必ずしも高いとは言えません。一方で、失敗事例における失敗要因分析については、ある程度の特定が可能であるため、「同じ轍を踏まない」ための有効な示唆となります。つまり失敗事例の分析こそが、次の成功を生むための重要な起点になるものと考えられます。

 第三に、スマートシティーに関する取り組みを社会実装させるためには、官民の連携が必須となります。上記に述べた失敗事例の失敗要因分析については、官民で一層情報共有をしながら、日本におけるスマートシティーの取り組みを推進し、2020年代~2030年代における日本の経済を牽引する取り組みへと昇華させていく必要があります。

 上記のような点も踏まえて、スマートシティーの実証事業について、独立した第三者の立場から評価する第三者機関を設置することが考えられます。その際には、成功事例だけでなく、失敗事例とその失敗要因を分析し、得られた知見を自治体や民間企業へ提供することが求められます。重要なのは、プロジェクトを監査したり、公的資金の使い方をチェックしたりするといった機能ではなく、スマートシティーにチャレンジする自治体や民間企業が社会実装を実現するために必要な情報を提供することです。このような第三者機関を、産学官金といったさまざまなステークホルダーがリソースを拠出して整備することで、スマートシティーの社会実装の確率を高めていくことが期待されます。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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