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「中国の新興EVブランド等のコックピットのデジタル化に関する研究会」設立について

2022年12月20日 程塚正史、李建平、新倉美紀、福永健二


 中国では新エネルギー車(EVやPHVなど)の販売が継続的に伸びており、2022年は通年で650万台以上となる見込みです。EVは従来のガソリン車と異なり、伝統的な自動車メーカーだけでなく、蔚来汽車や小鵬汽車のような新興ブランドや、HuaweiやAlibabaのようなIT企業が関わるブランドによっても生産・販売されています。このような新興EVブランド等では、駆動装置を電動化すると同時に車室内空間のデジタル化を積極的に進めています。

 車室内空間のデジタル化とは、ディスプレイ、オーディオ、シート、照明器具、芳香制御装置、エアコンなど五感を刺激する車載機器をソフトウェアによって制御し、車室内の人物に対して多様な体験を提供するコンテンツの普及を指します。例えば、空間全体がリラックスできる状況になるコンテンツ、近隣のカフェに行きたくなるコンテンツなどがあります。現在、中国では新興EVブランド等を中心に、Tesla含め日米欧韓の自動車ブランドではまだ実装できていないデジタル化の試みを量産車にて行っている状況です。

 自動車産業は、ソフトウェア・ファーストの時代に突入しつつあります。その際、様々なコンテンツを車室内で使えることが価値の一つとして想定されており、中国での動きはその潮流に先鞭を付けるものと位置付けられます。当然、すべての試みが利用者に受け入れられ普及するわけではないかもしれませんが、トライ・アンド・エラーを繰り返すことで、新たな価値やサービスが生まれる可能性があると考えられます。

 以上のような背景を踏まえ、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)は、中国の新興EVブランド等の、コックピットなど車室内空間のデジタル化の実態を整理し、今後の方向性や可能性を分析することを目的に、「中国の新興EVブランド等のコックピットのデジタル化に関する研究会」(以下、本研究会)を2022年12月に設立します。本研究会では、下記の活動を行います。

 ①中国の新興EVブランド等の車室内のデジタル化に関する実態整理
 中国にてすでに量産を開始している新興EVブランドやIT企業が関与する自動車ブランド5~6つ(以下、対象ブランド)を取り上げ、そのブランドの最新の車種における車室内のデジタルコンテンツに関して、各対象ブランドの担当者に解説してもらい、研究会メンバー社との質疑応答を通じて実態を整理します。

 ②中国の新興EVブランド等のデジタル化の背景や方針に関する整理
 各対象ブランドの最新の車種でのデジタル化の実態を踏まえて、その機能を搭載した目的や今後の開発方針に関して、各対象ブランドの製品や事業の企画に関わるメンバーに対してインタビューを行い、その内容を整理します。

 ③自動車のデジタル化に関する方向性の検討
 各対象ブランドのデジタル化の実態や、今後の開発方針等を踏まえて、自動車産業全体としての車室内のデジタル化の方向性や可能性について検討します。

 日本総研は、2020年代に中国の自動車産業が非連続な発展を遂げる可能性を見据え、2018年度以来、中国市場に関する研究会を毎年開催して参りました。中国の自動車関連メーカーのほか、IT企業をはじめモビリティサービス事業者、各級政府等と繰り返し意見交換を行い、中国市場に関する理解を深めてきております。また、車室内のデジタル化に関して研究するため、2021年度には高度な車載コンテンツが疑似体験できるプロトタイプを用いたモニター調査を行っております。本研究会は、これまでの活動に基づく知見を活かして実施いたします。

 本研究会終了時には、車室内のデジタル化の方向性を踏まえて、日系企業が進むべき方向性を明らかにし、国内外の企業による連携活動を進める予定です。

◆研究会メンバー
以下の事業者を中心に、日系の大手企業10~20社が参画します。
 ・自動車部品メーカー
 ・自動車用素材メーカー
 ・商社

◆活動期間
2022年12月23日~2023年3月24日


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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