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ニュースリリース

2022年12月15日

各位

一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN
株式会社日本総合研究所


U30世代の投票率向上のための施策案について

〜U30世代を5グループに分類、特徴に合わせた投票行動の促進策〜



 一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN(代表: 能條桃子)と株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教)は、共同プロジェクト「YOUTH THINKTANK」(以下「YTT」)の活動として、30歳未満の若者(以下「U30世代」)の投票率を上げるための施策案(以下「本施策案」)を取りまとめました。
 本施策案は、参議院選挙直前の2022年6月に実施した、U30世代を対象にした政治意識等に関する調査(以下「本調査」)の結果を踏まえて検討したものです。本調査の結果も合わせて発表します(※1)。

■本施策案を取りまとめた背景と目的
 U30世代の人口割合は、少子高齢化の進展によって減少し、2021年には有権者人口の13.4%にまで落ち込みました。選挙での投票率が他の世代より低いことも重なり、政治の場におけるU30世代の存在感は年々希薄になっているのが実態です。
 これからの社会を担う世代の声が政治に反映されにくくなっている現状を変えるためにも、U30世代の投票率を上げることが重要です。しかし、これまでU30世代の投票率の低さについては政治意識の低さの問題だけに矮小化されることが多く、政治意識の形成に影響する生活環境や情報摂取環境などにまで光を当てた分析は十分になされてきませんでした。そもそも、世代内での階層化が進んだ状態にあるU30世代については、一括りにせずにそれぞれのリアルを詳細に把握することから始めないと、投票率を高めるための手がかりをつかむことさえ困難です。
 以上の問題意識から本調査を実施し、それを踏まえて、本施策案を取りまとめました。

■U30世代の政治意識と投票行動
 本調査では、政治や社会に対する問題意識や行動について得られた回答結果を「自己効力感」(※2)と政治的・社会的な「問題意識」の2つの要素に着目して分析し、U30世代を5つのグループに分類しました。それぞれのグループの特徴を、以下のように動物を用いたキャラクターと名称で表し、それぞれの代表的な心情を表現するキャッチフレーズを付しました。
 以下の図は、自己効力感の高低を縦軸に、問題意識の高低を横軸として、各グループの位置関係をプロットしたものです。楕円の大きさは、U30世代に占める人口比を示しています。

■各グループの投票率を上げるために必要な施策案
 2022年7月に実施された参議院議員選挙におけるU30世代の投票率は、有権者全体の投票率52.1%に比べて著しく低い34.2%にとどまりました。以下は、各グループの特徴と投票意向、そしてそれらを踏まえて検討した投票率を上げるための施策案です。

①かえなキャット (自己効力感:高/問題意識:高)
「日本社会、どうにかしなきゃ!」

 正社員/学生の割合が高い(正社員: U30世代の平均37.7%に対し、41.9% / 学生: U30世代の平均27.3%に対し、33.6%※3)。社会を変えないと、という思いが強く、政治参加の意欲も高い。参院選投票意向(「投票する/期日前投票で投票した」の割合、以降同様)は50.1%と、U30世代の中では最も高い。
 投票に行かない主な理由としては、「今住んでいる市区町村で投票することができないから」(25.0%)と「忙しい、時間がない」 (25.0%)がトップに挙がった。これらの事実から、「不在者投票の制度を知らない」「知っていても登録の手間を嫌ってやらない」「投票所に行く時間がない」などが投票行動の阻害要因となっていると考えられる。
施策案(1) 不在者投票の認知拡大と手続きの簡素化
 不在者投票の認知拡大を図るための広報活動を強化する。特に、制度や手続きを分かりやすく紹介したウェブサイトをつくり、「選挙 住民票ない」などのキーワード検索からたどり着けるようにする。また、手続きを簡素化・デジタル化して、不在者投票のハードルを下げる。
施策案(2) 投票所のアクセス改善
 期日前投票所を駅前やショッピングモールなどアクセスのよい場所に設置すると共に、早朝や深夜でも投票できるようにするなど、勤労者でも投票しやすい環境をつくる。
施策案(3) インターネット投票(スマホ投票)の導入
 投票所に行く必要をなくすことで、忙しい人や住民票を移していない人も投票しやすくする。

②ふあんシカ (自己効力感:高/問題意識:中程度)
 「将来不安。でも自分が変えられるとは思えない」

 正社員の割合が低く(U30世代の平均37.7%に対し、31.9%)、将来に不安を抱えている。参院選投票意向は、U30世代の平均より高い36.7%であった。
 投票先を選ぶ基準として、 「自分の考えに近い政策を訴えている候補者・政党」(64.7%)や「自分と同じような世代のことを特に考えている候補者・政党」(36.4%)を挙げる人の割合が全グループの中で最も高い。自己効力感は「かえなキャット」ほど高くないが、社会や政治への関心がある「ふあんシカ」は、自分の声を代弁し、自分に代わって社会を変えてくれる政治家を求めていると考えられる。
施策案(4) U30世代が選挙に出やすくするための選挙制度の見直し
 「ふあんシカ」の投票意欲を向上させるには、U30世代の候補者を増やすことが重要である。そこで、被選挙権年齢を引き下げる(選挙権同様に18歳に)と共に、選挙供託金(現在は、衆議院300万円、参議院600万円)を大幅に引き下げ、選挙に出るハードルを下げる。
施策案(5) 政治家がU30世代の声に耳を傾ける場の創出
 デジタルツールも活用しながら、U30世代の声や実際の姿が政治家に届くための回路を構築すると共に、U30世代が政治家と直接対話できる場をつくる。

③がむしゃラッコ (自己効力感:低/問題意識:高)
 「目の前のことに精一杯」

 無職/専業主婦の割合が高い(無職: U30世代の平均10.8%に対し、17.5% / 専業主婦: U30世代の平均4.0%に対し、7.2%)。働き方・就職や妊娠・出産・子育てなど身近な問題を中心に、社会に対する問題意識は高いが、自分が社会を変えられるとは思っていない。参院選投票意向は、U30世代平均よりも低い 18.3%であった。
 投票しない理由としては、「選挙にあまり関心がないから」(52.1%)、「投票所に行くのが面倒だから」(42.4%)、「選挙によって政治はよくならないと思うから」(24.4%)と答える人が他に比べて突出して高い。そのことから、選挙という制度に対してそもそも期待していないことが分かる。
 また、「私一人が投票してもしなくても世の中は変わらないと思うから」(28.9%)と答える人も他に比べて多い。社会課題への関心はあるが、自己効力感が低いという特性が投票行動を抑制していることがうかがわれた。さらに、「自分のように政治のことがよくわからないものは投票しないほうがよいと思うから」(20.9%)を投票しない理由に挙げている人の多さも群を抜いており、選挙や政治に対する知識の不足感が投票行動の妨げになっていることが推察された。
施策案(6) U30世代にとって切実なテーマを政府の重点課題と位置付ける
 社会課題に対する関心は高いのに選挙に期待せず、投票行動に結びつかないのは、自分達にとって切実な問題が選挙の争点になることの少なさが原因と考えられる。「がむしゃラッコ」の関心が高い「働き方・就職(賃金、ワークライフバランス)」「妊娠・出産・子育てがしやすい社会環境の整備」などを重点的な政策課題と位置付け、それを争点にした選挙が行われるような仕掛けが求められる。
施策案(7) 政治参加意欲を育てる高校教育の充実
 政治参加意欲を育てるための教育プログラムを開発し高校教育に取り入れる。具体的には、選挙や政治に関する基本的な知識を授けると共に、同世代がこれから直面するであろう状況や、今、人々が直面している困難の背後にある社会問題について知り、それらを解決するためにどのような手立てがあるかを考える機会を提供する。

④らっカンガルー (自己効力感:高/問題意識:低)
 「今に満足。なんとかなるかな」
 U30世代の最大のグループで、全体の4割以上を占める。正社員の割合は「かえなキャット」に次いで高い(U30世代の平均37.7%に対し、40.2%)。政治・社会に対する関心は低く、参院選投票意向はU30世代の平均を下回る21.7%であった。
 投票しない理由として、「投票所に行くのが面倒だから」(23.3%)や「忙しい、時間がないから」(20.9%)が上位に挙がった。それらに対しては、「かえなキャット」の項で示した施策案(2)(3)が投票率改善に寄与する可能性がある。
 一方で、「選挙にあまり関心がないから」(21.9%)や「わからない」(18.1%)も投票しない理由の上位に挙がっており、投票を容易にするだけでは、投票率が上がらない可能性も高い。「らっカンガルー」は、社会課題や政治に対する関心がおしなべて低いが、かと言って大きな不満を政治に感じている様子もない。そうしたことから、現状に満足していて、問題意識を持つ必要がない状態であることも示唆される。
施策案(8) 上から目線の一方通行にならない情報提供活動
 関心を持っていない人に関心を持ってもらうのは非常に難しく、上から目線の一方通行の情報発信や啓発活動では、まず届かない。同世代の目線で、かつ、「らっカンガルー」が情報収集源としているテレビやSNSなどを対象に、それぞれの媒体の特性に応じた表現と内容での情報提供活動を行う。

⑤むきりょクマ (自己効力感:低/問題意識:低)
 「無気力・無関心」

 無職の割合が高く(U30世代の平均10.8%に対し、20.1%)、社会に対する関心や問題意識が著しく低い。参院選投票意向もU30世代で最も低い8.4%にとどまった。 社会的な関心も自己効力感も低く、働きかけるのが大変に難しいグループであるため、今回の施策案の検討対象からは外すこととした。U30世代の1割以下と数が少ないため、大勢に影響はないと考えた。


【本調査の概要】
  調査目的:   U30世代の政治意識、投票行動等の把握
  調査方法:   インターネット調査
  調査期間:   2022年6月22日(第26回参議院議員通常選挙公示日)~6月26日
  調査対象:   日本国籍を持つ日本在住の18~29歳男女5,000人
          総務省統計局「人口推計(2021年10月1日現在)」の日本人人口構成比に
          合わせて、性別、年代別、選挙区分(1人区/複数区)を加味のうえ割り付けた。
          ただし18~19歳は、15~19歳人口を按分して算出した人口を用いた。
  主な調査項目: 第26回参議院議員通常選挙の投票行動
          過去に行われた選挙の投票行動
          期日前投票・不在者投票の認知・利用経験
          社会課題・政治に対する意識
          ふだんの関心事・情報収集源


【YTTについて】
 YTTの立ち上げ趣旨と本調査の速報結果については、下記をご参照ください。
「U30世代の政治意識調査(速報)の公表について
〜U30世代の視点で「ありたい未来」をつくる「YOUTH THINKTANK」が始動〜
(ニュースリリース/2022年7月1日)
https://www.jri.co.jp/company/release/2022/0701


(※1)本調査の結果および本施策案の詳細は、以下からダウンロードできます。
 「U30世代の政治意識調査」(2022年12月15日発表)

(※2)自己効力感(Self-efficacy)
 Bandura(1997)は,ある行動を遂行することができる,と自分の可能性を認識していることを自己効力感と呼び,自己効力感が強いほど実際にその行動を遂行できる傾向にあると述べている。
(出所)江本 リナ 「自己効力感の概念分析」 日本看護科学会誌, 2000, 20 巻, 2 号, p. 39-45,
本調査では、自分の力で社会や政治を変えられる、と認識している状態を指す。

(※3) 高い/低い、多い/少ない
 本リリースで、「高い/低い」「多い/少ない」とした箇所は、全体に比べて統計上有意な差があった点について言及している。
以上

■本件に関するお問い合わせ先
 NO YOUTH NO JAPAN
  担当: 足立 E-mail: noyouth.nojapan@gmail.com
 日本総合研究所
 【一般のお客様】
  未来社会価値研究所/創発戦略センター 足達/井上  電話: 090-5508-2837
 【報道関係者様】
  広報部 山口  電話: 080-7154-5017

 
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