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リサーチ・フォーカス No.2022-043

デジタル給与払い解禁に向けた動きと今後の課題

2022年11月04日 谷口栄治


キャッシュレス決済が急速に普及するなか、労働者への給与を資金移動業者が管理する決済口座(〇〇ペイ等)に直接振り込むデジタル給与払いについて、本年10月、規制改革案が了承され、来年4月にも解禁される見込み。

デジタル給与払い解禁によって、銀行口座の開設が困難な外国人労働者等に金融サービスを提供する機会が拡大するほか、キャッシュレス化のさらなる進展といった効果を期待可能。

デジタル給与払い解禁にあたり、同事業に参入する資金移動業者の規制・監督について、金融庁に加え、労働者への確実な給与払いの観点から厚労省も実施。また、口座残高上限(100万円以下)、破綻時の利用者への弁済、現金での引き出し対応、当局への報告義務など、事業者が満たすべき要件を整備。

もっとも同制度の普及にあたっては、給与払いを行う企業の事務負担増加等が課題となるほか、円滑に運営していくために当局として以下の取り組みが必要に。
①資金移動業者と既存金融機関のイコールフッティング
金融・決済インフラにおいて資金移動業者のプレゼンスが拡大するなか、本人確認(KYC)、マネーロンダリング対策で問題がないか等、業務運営の監督が必要。
②破綻時における資金保全の有効性の検証
資金移動業者の破綻時に口座残高の「全額」を「速やかに」に弁済できることを保証するための仕組みについて、その有効性等を当局として不断に検証する必要。
③個人情報保護・データ管理に関する監督
資金移動業において個人情報等の利用が進むとみられるなか、情報管理や利用状況、利用者からの同意取得やプライバシー保護等に関する監督が必要。
④滞留資金(疑似預金)の法的な位置付けの整理
資金移動業者の決済口座への資金が滞留し、疑似預金化すると見込まれるなか、同資金の法的な整理について、継続的な検討が必要。

本制度は省令の見直しで導入が可能ながら、個人の給与払いの重要性に鑑みれば、拙速な制度開始は回避すべき。事務・システム面を含めて、制度設計をしっかりと行い、利用者が安心して利用できる仕組みとすることが肝要。


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