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リサーチ・フォーカス No.2022-038

データから見る都道府県別自治体DXの進展状況

2022年10月25日 野村敦子


市民に身近な行政サービスを提供する市区町村(基礎自治体)のDX(デジタル変革)は、喫緊の課題である。基礎自治体のDX の取り組みに対し、より効果的な支援策を講じるにあたり、実態の把握が重要と考えられる。そこで、本稿では政府が発表している資料やデータを基に、全国ならびに都道府県別に基礎自治体の取り組みの進展状況を把握するとともに、格差が生じている要因について考察した。

自治体DX の推進体制に関しては、CIO やCIO 補佐官の任命など、内部で人材を手当てできる比較的着手しやすいものから取り組みが進んでいる。しかし、DX に不可欠な外部人材の任用は全国で9.4%の基礎自治体しか実施できていない。

行政サービスの向上・高度化に関しては、オンライン化のためのシステム導入が進んでいる。しかし、「対面・書面・押印」文化からの脱却に不可欠な電子決裁システムは、全国で2 割程度の基礎自治体しか対応できていない。また、e-文書条例など制度的な対応もほとんど進んでいない。住民視点の指標を策定かつ測定しているところは全国で1 割程度と、ほとんどの基礎自治体にPDCA サイクルを回す仕組みがない。

行政手続きのオンライン化に関しては、処理件数が多く利便性や効率性向上につながる行政手続きについては首都圏などの大都市圏で実施が進んでいる。一方、子育てワンストップなどに必要な行政手続きは、比較的小規模な基礎自治体を擁する県でシステムの共同化が図られていることもあり、対応が進んでいる。ただし、利用率を見るとほとんど利用されていないのが現状である。

マイナンバーカードは全国で半数程度の国民が取得しているものの、基礎自治体における行政手続きのオンライン化との関係性が低いことが認められた。これは、カードの取得のみに焦点を当てて普及策が推進されてきたためと考えられる。オープンデータに関しても、国の方針を受け、多くの基礎自治体でまずはデータ公開が進められているものの、本来同時に進めるべきデータの質や利活用、民間との連携・協働の促進などについてあまり考慮されていないために、実施率も低いものと推察される。

都道府県別に総合的な取り組みの進展度合いを偏差値化して比較し、影響を与えている要因を分析したところ、「町村の割合」が多いところほど取り組みが遅れている可能性が認められた。国は、都道府県が町村の取りまとめやシステム・外部人材の共同化・共通化などを重点的に支援できるように施策を講じることが求められよう。


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