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SNSによる地域の災害情報連携

2022年10月12日 瀧口信一郎


 コロナ禍でネコが我が家にやってきて癒しをもたらしてくれている。新規感染者も漸減してきたことから、旅行に行けるかもしれないとペットも泊まれるホテル・旅館を探し始めていた矢先、台風15号が観測史上最大の雨量を計測した静岡県で、安部川支流の油山川沿いのペットも泊まれる温泉旅館が浸水被害にあっているとの情報が入ってきた。川から濁流があふれ出し、宿泊客の駐車場がまるで川となり、最後は旅館の中に水が流れ込んできたという。
 旅館経営者がSNS(Social Networking Service)で旅館に迫りくる洪水情報を逐次発信していた。「早く逃げてください」との声もあったが、その情報発信のひとつが思いがけず近くの旅館の安心につながる一幕もあった。旅館経営者がSNSで伝えた救助隊が来るという情報が、情報が不足し不安におびえていた近くの旅館に転送された結果である。最終的に、2つの旅館の宿泊客、従業員、経営者、そしてペットいずれもが無事救助されたと伝えられる。

 問題は、なぜ近隣の旅館どうしで救助隊の情報が共有されなかったのか、災害時の地域情報連携はなぜ機能しなかったかである。「停電でテレビは映らず、大雨で自治体スピーカーも機能せず、現場に近寄ることもできなかったから」で終わらせてしまってよいものであろうか。
 SNSに存在するペット好きのコミュニティを通じて情報が拡散した。旅館どうしの情報媒介役として機能し、災害時の重要な情報基盤となった。今後、地域内でもSNSを通じた情報連携が見直されてよいだろう。局所的な現地情報だけでは時々刻々と変わる災害の切迫度が伝わらないため、上流で水位が上がってきているといった流域を俯瞰できる主体からの情報共有を、SNSを通じて行うというのも有効だろう。自治体の災害情報システムというより、普段使っているSNSを通じて、事前の災害対応情報、災害の危険度の時々刻々の変化、取るべき行動の助言、救助隊の動向について伝えていくアイデアである。
 もちろん、SNSで拡散される情報は信頼性の問題がつきまとうため、SNSの情報は最大限活用しつつも、自治体などのしかるべき地域機関から責任をもって伝えることも大切であろう。

 加えて、予測性を高めるため、民間企業との情報連携も導入できるだろう。前述の静岡県の例で言えば、支流の油山川を含む安部川水系にダムはないが、中部電力が新たに建設する砂防堰堤から迂回水路をつくり、水力発電を設置する予定である。発電のために行う気象予測や水位、流量のデータを共有し、流域の流量予測に活用することが考えられる。支流の小規模の油山川では水力発電の設置は難しいが、今後脱炭素で進む水力発電の整備は流域のデータ集積に貢献するはずである。

 台風15号で被害にあわれた方には改めてお見舞い申し上げたい。静岡県に被害が集中し、全国メディアでは、史上最大級と言われた台風14号に比べると台風接近時の警戒情報が少なかったように感じる。見落としかねない局所的な被害を防ぐ情報基盤の重要性を痛感した。
 創発戦略センターグリーンチームは、流域治水を支援する情報基盤のあり方について「流域DX研究会」を立ち上げている。様々な方々の災害の経験を踏まえながら検討を進めていきたい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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