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国際戦略研究所 研究員レポート

【米国情勢報告】2022年中間選挙に向けた米国国内情勢を探る(その2)~選挙の行方を占う 3要素~

2022年09月15日 市瀬由香里


■中間選挙まで2か月を切り、米国は本格的に政治の季節に突入
米国はコロナ・パンデミックやウクライナ侵攻の影響を受け、未曾有の高インフレが国内経済や国民の生活を圧迫し、引き続き不安定な国内情勢が続く。11月に実施される2022年中間選挙は、ジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領との「代理戦争」とも呼ばれ、2024年大統領選挙の試金石ともなる選挙だ。

いまもトランプ氏によって仄めかされる2024年大統領選挙再出馬は、不透明な点が極めて多い。最近でもFBIによる家宅捜査を始めとする数々の刑事捜査がトランプ氏に対して行われており、こうした「トランプ・リスク」を巡って、共和党は分裂し始めている。しかしながら、中間選挙の勝敗を決するのは限られた「激戦州」と呼ばれる数か所であり、民主・共和党による肉薄した戦いとなることは間違いない。

■投票率が選挙の行方を左右する
ポリティコの分析によれば、2022年中間選挙は、現時点で共和党が下院12議席リードで、たとえ民主党が上院で勝利したとしてもねじれ議会となる予測である。支持率、投票率ともにマンネリ化する中間選挙にあって従来であれば、野党(共和党)に有利な選挙戦であるが、選挙の行方を変え得る変数は例年にも増して異様に絡み合う。

とりわけ注目すべきは投票率の行方である。中間選挙の平均投票率は40%程度だが、前回の2018年中間選挙は極めて例外的であった。過去100年間の中間選挙の歴史において最高の投票率、49%を記録した(前回比11%ポイント増、計約1億1,600万人)。大幅な投票率増加の背景には、フロリダ州パークランドの高校で17名が死亡した銃乱射事件(2018年)に伴うミレニアル世代の憤りや、トランプ政権への反発が、多くの若者を初めて投票所へ向かわせた。結果、野党・民主党(当時)は41議席奪還という1974年以来の歴史的勝利を収めた。これらは、国民の選挙行動に本質的な変化が起きたことを示唆した。

最新のロイター/イプソス社の調査によれば、「11月の総選挙で間違いなく投票にいくつもり」と民主党支持者が約63%、共和党支持者の65%が回答(9月7-12日実施)。更に、1月末日実施の同内容の調査結果(55%の民主党、59%の共和党)と比較すると、一般的に投票率が低い中間選挙にも関わらず、双方のモチベーションは2018年と同じくらい加熱し、また拮抗していることが分かる。

それではこれらの選挙の行方、ないし投票率を変動しうる3つの変数について分析する。これら変数如何では、民主党への追い風は今後さらに強まり、下院維持の可能性さえも完全に否定しきれない。あるいは共和党が巻き返すのか、注視する必要がある。

本稿では、11月の中間選挙に向けて結果を左右し得る変数を、①高止まりするインフレ、②人工妊娠中絶の権利、③ドナルド・トランプの影響力の3つに大別し、今後の見通しを分析する。

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【米国情勢報告】2022年中間選挙に向けた米国国内情勢を探る(その2)~中間選挙の行方を占う 3要素~
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