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リサーチ・フォーカス No.2022-030

わが国におけるソーシャルレンディングの現状と展望

2022年08月24日 谷口栄治


ソーシャルレンディングは、銀行等の金融仲介機関を介さずに、融資を希望する主体(資金需要者)と、投資目的で資金を提供する主体(資金提供者)を、インターネットサイト上でマッチングする金融サービス。

資金需要者にとっては、既存金融機関ではリスクをとるのが難しい案件でも資金調達ができる可能性が広がる、資金提供者にとっては、小口かつ短期の投資で相対的に高い利回りが期待できる、といった利点が存在。

もっとも、わが国では2017 年頃から、当時の大手事業者が相次いで行政指導を受けるなど、不芳事例が頻発。とりわけ、事業者が資金提供者に対して、虚偽の表示や誤解を与える説明を行って資金を集め、貸し倒れが生じるなど、事業者と資金提供者の間の情報格差を悪用した事例が問題に。

こうした事態を受け、金融当局や業界団体が、投資家保護を目的に、貸付先に関する情報を積極的に開示することを事業者に要請。また、2022 年6月に公表された金融庁の金融審議会・市場制度ワーキンググループの「中間整理」のなかで、事業者に対して、有価証券に投資するファンド等と同様に、善管注意義務や忠実義務等の明確化、投資家に対する追加的・定期的な情報提供といった必要な措置を講じるべきと指摘。

一連の規制強化策は、資金提供者への情報開示の充実、事業者の審査態勢やリスク管理体制の高度化等を通じて、同市場の健全性を高める取り組みと評価可能。足元の競争環境等を踏まえれば、ソーシャルレンディングが法人向け貸出市場においてシェアを伸ばしていくのは容易ではないものの、重要な政策課題であるスタートアップに対する資金支援など、ハイリスクな案件に対する資金提供手段としての役割が期待される。

このほか、個人投資家が詐欺等の犯罪に巻き込まれるリスクを軽減し、金融ウェルビーイング(金融面での幸福・充足)を高めていくためにも、金融教育の充実を通じたリテラシー向上が必要。また、規制緩和等を通じて、金融業界で広がりつつあるマッチングビジネスについても、仲介事業者が利用者に適切な情報開示を行っているか等、折を見て点検する必要あり。

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