コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

「ヘルスケアデジタル改革ラウンドテーブル」開催について

2022年08月17日 リサーチ・コンサルティング部門 ヘルスケア・事業創造グループ、川崎真規山本健人、辻恵子、土屋敦司、上田健史


 本邦では、医療情報連携やヘルスケア分野のデータ利活用について、さまざまな議論・提言がなされており、6月に閣議決定された「骨太方針2022」(※1)においても本領域の検討は重要なテーマとなっています。
 医療情報連携・活用がさらに進むことで、医療従事者などの業務負担軽減、医療技術のイノベーションの促進につながると考えられます。また、医療情報連携とデータ利活用に向けた取り組みは、持続可能で質の高い医療提供体制を構築し、国民の健康寿命延伸と健康・医療産業の促進に欠かせないものと考えられます。
 しかし、医療情報連携・活用の促進に向けては、データの標準化、セキュリティの強化、利活用に当たってのルール整備などさまざまな課題があります。

 現在、医療情報連携のための新しい標準規格としてHL7 FHIR(※2)を用いた情報連携・活用の議論がなされており、基本となる情報(※3)の連携に向けた検討が進められています。しかし、今後は、さらなる情報連携・活用の促進に向けて、非構造化データ(※4)を含めた診療データ全体の活用課題も検討する必要があります。また、医療情報連携・活用を促進すべく、ベンダーロックイン(※5)が生じないようデータの標準化なども進める必要があると考えます。
 そして、国民・医療従事者にとって効果的で利便性が高く、安心して使える健康・医療サービスの提供も不可欠です。セキュリティと国際的な相互運用性(※6)を両立するクラウドコンピューティング(※7)で管理され、情報の標準化と国際的に認められたプライバシー・バイ・デザイン(※8)の原則を踏まえた制度や仕組みが必要です。

 このような医療情報連携・活用の促進に向けた課題解決のためには、患者・医療従事者視点でのビジョンを共有し、統一的かつ具体的に解決策を示す必要があると日本総合研究所(以下、日本総研)は考えます。そこで、日本総研は、政府の政策検討動向を踏まえつつ、患者・医療従事者視点でのビジョンのもと、医療情報連携とデータ利活用の促進に向けた課題とその解決策を検討し提言する「ヘルスケアデジタル改革ラウンドテーブル」(以下、ラウンドテーブル)を実施します(※9)

 本ラウンドテーブルでは、森田 朗東京大学名誉教授を座長に迎え、医療情報やセキュリティ、プライバシー、医療政策や医療経済等の専門家(参考)に参画いただきます。

(参考) ヘルスケアデジタル改革ラウンドテーブル 構成員

氏名(所属・肩書)※敬称略
 森田 朗(東京大学 名誉教授)
 石井 夏生利(中央大学国際情報学部 教授)
 伊藤 由希子(津田塾大学総合政策学部 教授)
 落合 孝文(渥美坂井法律事務所 外国法共同事業シニアパートナー、日本医療ベンチャー協会 理事)
 黒田 知宏(京都大学院医学研究科 教授)
 近藤 則子(老テク研究会 事務局長)
 宮田 俊男(医療法人DENみいクリニック 理事長、早稲田大学理工学術院教授)
 美代 賢吾(国立国際医療研究センター 医療情報基盤センター長)

本ラウンドテーブルでは、具体的に以下の論点について検討します。
●日本のヘルスケア分野におけるデジタル化・医療情報連携の現状および問題点はどのようなものであるか。
●ヘルスケア分野におけるデジタル改革に向けて、どのような原理原則のもと施策を検討していくべきか。
●医療情報連携・活用の促進に向け、法・制度・行政の取り組みとして、どのようなものが必要か。
●国際的な基準に基づいた、セキュリティやプライバシーを確保したシステムはどのようなものか。
●医療情報が活用された結果、患者・医療従事者・政府にどのような便益がもたらされ、どのようなビジョンを共有するべきか。

 そして、本ラウンドテーブルでの議論を踏まえ、日本における医療情報連携とデータ利活用に向けた実現可能な提言を行います。具体的には、全3回(8月・10月・12月)のラウンドテーブルを開催し、ラウンドテーブルの検討結果を基に、2022年10月頃に提言要項を公開、12月頃に提言本文を公開する予定です。いずれも日本総研ホームページで公開します。

(※1) 骨太方針2022:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~(令和4年6月7日閣議決定)参照。
(※2)HL7 FHIR:海外で注目されている医療情報交換のための実装しやすい新しい標準規格。厚生労働省は、2022年3月に標準規格として採用した。厚生労働省「『保健医療情報分野の標準規格(厚生労働省標準規格)について』の 一部改正について(令和4年3月24日)参照。
(※3) 基本となる情報:3文書および6情報のこと。3文書は、①診療情報提供書、②退院時サマリー、③健診結果報告書の3つ。6情報は、①傷病名、②アレルギー、③感染症、④薬剤禁忌、⑤検査(救急、生活習慣病)、⑥処方の6つ。厚生労働省 「全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とするための基盤について(2022年5月)参照。
(※4) 非構造化データ:構造化データが、事前に定義された形式で保存されるのに対して、さまざまな種類の形式で保存される規則性のないデータのこと。一般的に、構造化データに比べて、解析や分析が難しいとされている。例えば、電子カルテにおける自由記述欄が非構造化データにあたり、医療において重要な情報を含んでいると考えられている。
(※5) ベンダーロックイン:情報システムなどを構築する際に、ある特定のメーカーの製品・システム・サービスに依存した構成にすることで、他社への乗り換えが困難になること。内閣府規制改革推進会議 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループで、医療におけるベンダーロックインについて指摘がなされている。内閣府「第3回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ 議事概要(令和4年2月 24 日(木)15:00~18:15)参照。
(※6) 相互運用性:共通のプロトコルや情報交換の規則などを通じて、複数のシステムやプログラム同士のデータのやり取りやファイルの読み書きができること。
(※7) クラウドコンピューティング:ITリソースを必要なときに必要な分だけインターネット上で利用できるサービス。
(※8) プライバシー・バイ・デザイン:システムの仕様検討や設計段階から、ユーザーのプライバシー保護をあらゆる側面で検討し、あらかじめプライバシー保護対策を組み込むこと。
(※9) ヘルスケアデジタル改革ラウンドテーブルは、日本総研の健康・医療政策コンソーシアムの個別プロジェクトの1つ。日本総研「健康・医療政策コンソーシアムの組織・運営体制と活動計画について」(2022年7月12日)参照
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ