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リサーチ・フォーカス 2022-026

こども家庭庁設置後に取り組むべき保育制度の課題
子育て家庭へのアンケート結果を踏まえて

2022年08月05日 池本美香


本年6月にこども家庭庁設置法とこども基本法が成立した。とりわけ子どもの権利について総合的に定めた基本法の意義は大きい。本稿では、日本総合研究所が子育て家庭を対象に本年3月に実施したアンケート結果を踏まえつつ、基本法の理念に沿った保育制度改革の在り方について考察した。ポイントは、大きく次の3点である。

第1に、幼保の所管省庁の一元化である。厚生労働省所管の保育所と内閣府所管の認定こども園がこども家庭庁に移される一方、幼稚園は文部科学省に残された。しかし、幼保の中身の差が縮まり、保育所にある親の就労等の利用要件撤廃を求める声が強まっている今日、こうした二元体制を残す意義はない。保育を教育政策と捉えたうえで一元化が目指されるべきである。

第2に、基本法の理念を実際に政策に落とし込むための保育制度の抜本的見直しである。まず、質の確保に向けては、以下のような取り組みが必要である。①保育施設における保育者の配置基準の改善、②認可施設であるか否かに関わらず良質な施設の存続を後押しする補助金制度への転換、③第三者による施設評価の義務化と評価結果の公表、④子どもコミッショナーやオンブズマンなど親と子どもの声を聴く仕組みの導入、⑤保育者による性犯罪等を防ぐため、信頼に足る保育者であるかどうかについての公的照会機関の設置。次に、全ての子どもに対し確実な保育利用を保障するために、自治体に対する一定期間以内の保育提供の義務付けや、インクルーシブな制度づくりが求められる。

第3に、限られた財源の効果的使用である。例えば、長時間労働を前提とし時間外保育の供給増で対応するのではなく、働き方を見直し保育時間を適正化すべきである。それは費用面のみならず、親と子にとってメリットが大きい。アンケート結果でも、子どもと一緒に過ごす時間の確保を希望する親の声が多い。その他、保育現場や行政の事務コスト削減のための情報通信技術の積極的な活用、保育施設を通じた親の就労促進や孤立・ストレスの緩和による貧困・虐待の予防も不可欠である。

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