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JRIレビュー Vol.7,No.102

アジア経済見通し

2022年07月26日 野木森稔、松本充弘、関辰一熊谷章太郎


2021年秋口からアジア諸国の景気は回復傾向にあったが、2022年に入ってからは新型コロナ感染への対応の違いを背景に、国・地域間にばらつきが生じた。先行きは、①活動規制の緩和、②中国経済の持ち直し、③外需の増加、により総じて回復を続ける見込みである。2022年のアジア全体の実質GDP成長率は前年比+4.7%と、2021年の同+7.2%から減速するものの、コロナ禍前の2019年(+5.0%)並みの安定した経済成長を予想する。

ただし、金融面の不安定化に伴う景気下振れリスクに注意する必要がある。アメリカで金融政策の正常化が加速するなか、アジアへの資本流入が減少し、金融市場が不安定化する可能性が高まっている。とくに、新型コロナとウクライナ危機により、①経常収支の悪化、②インフレの加速、③政府債務の累増など、アジアの対外収支を巡る経済構造が脆弱となっており、資金流出リスクが高まっている。

新型コロナとウクライナ危機は、アジア経済の構造変化を促す可能性もある。中国政府はゼロコロナ政策を堅持していることから、在中国の外国籍企業の多くが厳しい活動規制の発動を警戒して、脱中国の動きを進めている。アメリカが進める友好国との関係を活かしたサプライチェーン強化の方針「フレンド・ショアリング」がこうした脱中国の動きに拍車をかける可能性がある。

アジア諸国のうち中国では、上海での都市封鎖(ロックダウン)など厳しい活動規制によって4~6月期に景気が大きく低迷した。今後は、活動規制の緩和と景気対策の実施により、持ち直しに転じると見込む。ただし、ゼロコロナ政策による4~6月期の景気低迷が足かせとなり、2022年の実質GDP成長率は+4.4%と低い伸びにとどまる見通しである。

インドでは、活動規制の緩和に伴う景気回復が続き、2022年度の実質GDP成長率は+6.5%と予想される。もっとも、インフレ加速や金融引き締めによる景気下押し圧力も高まっており、回復ペースは緩やかにとどまる見通しである。
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