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分散型電源はネットワーク化に向かう (3) 分散型ネットワークの取り組み

出典:分散型発電新聞 2004年7月25日

マイクログリッドとは一般的に、需要地内に配置した分散型電源をネットワークして電力供給を行う小規模の電力網を指すものである。分散型電源の発電量を需要状況に合わせて制御し、電力の需要供給バランスはもちろん、電圧や周波数といった電力品質の維持にも配慮する。
2002年のRPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)施行後、風力発電や太陽光発電などの自然エネルギーが急速に普及する一方で、こうした出力の不安定な電源が多く連系されることにより、系統の安定性や信頼性が損なわれることが懸念されている。マイクログリッドには、自然エネルギーを、出力の調整が可能な他の分散型電源や2次電池と組合せて統合制御することで、系統への影響を最小限に抑える狙いがある。

また、バイオマスの利用拡大も目的の一つだ。バイオマスエネルギーは広範囲にわたって存在する上に、化石燃料に比べてエネルギー密度が低いため、分散配置した電源を活用することで効果的に普及を図ろうとしているのである。
国内では、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)が5ヵ年計画で立ち上げた「新エネルギー等地域集中実証研究」の委託事業として研究が進められており、いよいよ2005年にはマイクログリッドによる実需要への供給が実現される見通しだ。
青森県八戸市では、市と民間企業2社の官民共同によって、マイクログリッドの実証研究が行われている。分散型電源を自営線によってネットワークして、小中学校や市庁舎に電力を供給する計画である。
自営線の総延長は5キロメートルに及び、小中学校や市庁舎に設置される風力発電(合計出力20kW)や太陽光発電(合計出力80kW)、下水処理場に設置されるガスエンジン(出力170kWを3台)の他に、2次電池(出力100kW)が連系される。ガスエンジンの燃料には、下水処理場から排出されるバイオガスが使われるため、極めて環境性の高いシステムとなる。
校舎や市庁舎の電力需要と分散型電源の出力データは、光ファイバーを利用した通信線によって収集される。このデータに基づき、ガスエンジンや2次電池の出力を需要にあわせて統合制御することで、ネットワーク内で電力の需要と供給のバランスを取り、電力品質を維持することができる。この制御がマイクログリッドのカギとなる技術だ。電力会社の系統とは連系されるが、需給バランスの維持は基本的に系統に頼ることはない。
八戸地域は、政府が構造改革の一環として推進する特区制度のなかで、「環境・エネルギー産業創造特区」に指定されている。マイクログリッドの実証研究も特区制度の指定地域内で行われるため、特区によって認められた規制緩和(特定供給条件の緩和)の活用も視野に入れて計画が進められている。

[ 八戸など特区でマイクログリッド ]

愛知や京都でも同様のプロジェクトが進められているが、いずれのマイクログリッドも実証研究の段階だ。今後、研究が進むにつれて、技術的な課題が出てくることも予想されるが、実現すれば、新エネルギー普及のはずみとなる。これまで整備されてきた電力系統を活用しつつ、太陽光発電や風力発電、バイオマスと言った環境性の高いエネルギーを効果的に利用できることから、今後の技術開発に寄せる期待は大きい。

(つづく)

 

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