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分散型電源はネットワーク化に向かう (2) 分散型ネットワークの種類

出典:分散型発電新聞 2004年7月15日

複数の種類や台数の分散型電源をネットワーク化して統合制御する取組みが始まった。ネットワーク化により様々なメリットが期待できるためだ。今回は、ネットワークの種類や目的について整理したい。分散型ネットワークは大きく2つの種類に分けられる。一つは、既存の電力系統を利用するもので、もう一つは電力系統とは別に、自前の電力送電線を整備して利用するものである。

まず、電力系統を活用した分散型電源のネットワーク化について見てみよう。電力系統を利用した分散型電源のネットワーク化は、異なった2つの立場から取組みが進められている。一つは、電力会社の取り組みである。電力会社の取り組みとしては、米国のバーチャルパワープラント(VPP;Virtual Power Plant)が有名だ。VPPとは、大規模集中型の発電所を整備する代わりに、複数の分散型電源を分散設置し統合制御することで、電力供給力を確保する方式のことである。VPPは、電力の供給力確保に要するコストの最小化を目的としている。自由化により、電力会社間の競争が激化している米国では、発電設備などへの投資コストを極力抑制しなくてはならない。発電所から需要地までの、送電線容量の増大工事などを必要とする大規模発電所の整備よりも、需要地近傍に分散型電源を設置して送電線整備コストをかけない方が、安価に供給信頼性の高い電力システムが築ける場合もある。こうした観点から、複数サイトへの分散型電源設置と統合制御が選択される例が増えているということだ。

もう一方は、需要家の取り組みである。経済性や環境性向上の視点から、工場などにコージェネレーションが設置されるケースが増えている。コージェネレーションは総合効率が80%以上と高いが、電力や熱の供給範囲が関連法規制などによって限定されていることから、効率向上に限度があった。もともと電気事業者ではない企業が、敷地を越えて資本関係が異なる企業に電力融通(売買)をすることは認められていないためだ。昨今、規制の特例を導入する特定の区域を設け(特定供給条件の緩和)、電力を需要家間で相互融通することで更なる高効率化を実現しようという取り組みが始まった。その一例が、山口県周南コンビナートだ。同コンビナートは、「環境対応型コンビナート特区」に位置づけられ、コンビナート内での電力の相互融通が可能となっている。ある工場で発生した余剰の電力を他の工場で利用することで、エリア全体でのエネルギー効率向上を実現しようという考え方である。

次に、自営線を用いたネットワークについて見てみよう。自営線によるネットワークの代表がマイクログリッドだ。自営線によるネットワークでも電力系統から完全に独立することはないが、ネットワーク単位で電力系統に接続され、接続点が1ポイントとなる。今後、太陽光や風力発電のように成り行きで発電する自然エネルギー系の分散型電源や家庭用燃料電池などの小型分散型電源が増加すると、電力系統の電力品質に及ぼす影響が心配されているが、ネットワーク単位で制御をすることで電力系統にかかる負担を最小限に抑えることができるということだ。このように、自営線ネットワークの目的は、総合効率の向上だけでなく、電力系統に負担を与えない形での自然エネルギーの最大利用である。また、ネットワーク単位で電力品質を制御できれば、非常時でも電力供給が可能となるというセキュリティ面でのメリットも見えてくる。
以上のように、分散型電源のネットワーク化には系統利用と自営線利用の2種類がある。このうち、自営線利用のほうが自然エネルギーの利用増大やセキュリティ向上といった更なる付加価値への期待が大きい。次回以降は、自営線によるネットワークに焦点を絞っていく。
(つづく)

 

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