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SRI・企業格付対応>基本的な考え方
CI活動・企業評価

出典:環境経営辞典 2003年版

(1)SRI・企業格付対応の意義

企業活動はいくつかの市場のなかに位置付けられる。製品市場、労働市場、資本市場などがその代表といえるであろう。このうち、環境ラベルや環境広告が主として製品市場における対応策であるなら、SRI・企業格付対応は資本市場を意識した戦略といえよう。 

(2)SRIの趨勢

社会的責任投資(Socially Responsible Investment)は、欧米を起源とする投資の考え方である。欧米には、従来から倫理的投資(Ethical Investment)という考え方があった。タバコやアルコールなどの特定の業種を排除するネガティブ基準を特徴としていた。それが、英国のサステイナビリティ社ジョン・エルキントンによって97年に「トリプル・ボトム・ライン」というコンセプトが提起されるに至って、新たなパラダイムが生まれた。「トリプル・ボトム・ライン」とは、経済性、環境適合性、社会適合性の3つが21世紀に持続可能な企業の条件であるという考え方である。企業の経済性、環境適合性、社会適合性の3つのパフォーマンスを評価し銘柄選定をする投資行動が、今日の社会的責任投資の代表的形態となっている。

(3)米国の状況

Social Investment Forum が発表した“2001 Trends Report”では広義の社会的責任投資全体の2001年の状況が報告されている。
このなかで、米国の社会的責任投資は1.スクリーニング、2.株主行動、3.コミュニティ投資の3つに分類され、全体の規模は2兆3,400億ドルに達しているとされている。この規模は全米の専門的投資運用規模に対して約12%の割合にあたる。
このうちスクリーニング型の投資行動の規模は2兆300億ドルと推定され、伸び率99年比36%増となっている。その内訳は、オープン投信が1,530億ドル(99年比1%減)、個別勘定が1兆8,700億ドル(99年比39%増)である。オープン投信の設定数は230ファンド(99年調査から62ファンド増加)となっている 。この期間は米国の株価下落が続いていた時期であり、99年調査に比べると10億ドルの減少であるが、実際には資金流入の状態にあったものと考えられる。
「環境」はスクリーニング型の投資行動の評価項目として運用事例の50%以上で採用されていると伝えられており、上記のファンドも過半数で企業の環境配慮行動評価を反映させていると推測される。
2001年に入って、最初の9ヶ月で米国のオープン投信市況は、下落率でマイナス94%の下落に見舞われた。これに対して、SRI型オープン投信の下落率はマイナス54%に留まっており、そのパフォーマンスの良さを物語っている。

(4)欧州の状況

Sustainable Investment Research International(SiRi)Group がまとめた“Green, social and ethical funds in Europe 2001”では、SRI型オープン投信の欧州における最近の動向が報告されている。
欧州内のSRI型オープン投信は、設定数251ファンド(2001年6月末現在、2000年1月から58%増加)、資産残高156億ユーロと見られている。1999年末の資産残高は111億ユーロであり、この間の株式市況全体の下落も勘案すると極めて高い成長率を記録している。資産残高の規模が大きいのは、英国、フランス、イタリア、オランダ、スイスの順で、伸びが高いのはフランス(1700%)、ドイツ(300%)などであり、英国でも18ヶ月で48%の伸びとなっている。
また、報告では、SRI型オープン投信のオープン投信市場全体に占める割合が試算されているが、ドイツ(0.10%)、フランス(0.22%)が低く、オランダ(1.45%)、スイス(1.47%)が相対的に高くなっている。
欧州内の個別勘定による社会的責任投資の規模に関するデータは不詳だが、英国では2000年10月に年金基金の約8割が社会的責任投資との調査結果も報告されている。

(5)社会的責任投資を促進する年金、保険等の制度改正

企業の環境経営全般を評価して投資を行う行動は、機関投資家等でも顕著になっている。英国では2000年7月に年金法が改正された。「投資判断の際に、企業の環境、社会配慮を考慮しているか」についての開示が義務付けられ、金額ベースでは8割近い年金基金がこうした考慮を始めている。同様の制度改正はフランス、ドイツ、オーストラリアなどでも実現している。公的年金、企業年金、個人年金のうち企業の環境経営全般を評価して投資を行う行動が顕著であるのは、企業年金のカテゴリーである。この場合、ひとつの年金基金が、複数の投資信託(個人向けとは別勘定で設定)に投資を行う形態が通例となっている。
他方、保険業界でも英国保険協会 は2001年11月に「社会的責任投資に関する情報開示ガイドライン(The ABI Disclosure Guidelines on Social Responsibility)」 を投資の対象になる企業に対して示し、自らが企業の環境、社会配慮を考慮して投資を行っていく姿勢を明確化した。英国大手保険会社CGNUは、大手上場企業100社に対して環境報告書の作成を要求、作成しない場合にはその年度の会計報告の承認に反対票を投じるとの方針を打ち出している。

(6)株主代理権による企業への影響力行使

近時、社会的責任投資は企業の環境配慮行動を評価して銘柄選定を行うばかりではなく、株主代理権行使によって企業に直接的に影響力を及ぼそうとする動きも目立っている。米国の社会的責任投資においては社会運動と連携して古くから影響力行使が存在してきたが、欧州においても気運が高まっている(英国のFriends Ivory & Sime社、スイスのETHOS Services社など)。具体的には、株主代理権の存在を背景に企業とさまざまな対話を重ね、企業行動の変更を求めていく形態と、株主総会において会社側の議案に反対したり、自ら議案を提出して企業行動の変更を求めていく形態がある。カナダでは、こうした株主代理権を行使しやすいよう2001年に法律改正がなされた経緯がある。

(7)企業の社会的責任の必要性を求めるEUガイドラインの発行

2001年7月、欧州委員会は“Promoting a European Framework for Corporate Social Responsibility”と題するグリーンペーパーを発行した。このなかで欧州委員会は企業の社会的責任に関して、「欧州が世界で最も競争力を有し、活力溢れた知識基盤を基礎とした経済を有し、より多くのしかも待遇の優れた仕事と社会的な連帯を前提とした持続可能な経済成長を実現する」という戦略的ゴールに積極的に貢献するものという位置づけを与えている。そのうえで、2003年末までに設立予定の欧州株式市場において、社会的責任投資ファンド設立の基礎となる環境・社会パフォーマンスに優れた企業からなる欧州株価指標の必要性をうたっている。こうした言及は、行政が社会的責任投資を肯定的に評価する立場をとるものとして注目されている。

(8)企業格付のひろがり

社会的責任投資の市場規模拡大にあわせて、企業の社会的適合性や環境適合性に関する評価を担う調査機関の側でも、新たなインデックスの開発、調査フォーマットの共通化の動きが広がっている。
スイスのSustainable Asset Management社がDow Jones社と組んで、99年にスタートした Dow Jones Sustainability Group Indexはもはや老舗の域に入る。ドイツのOekom Research社は2001年から「環境格付け」を「サステイナブル格付け」に模様替えしている。英国では、Pensions & Investment Research Consultants(PIRC)のSRI RatingやSafety and Environmental Risk Management Rating Agency(SERM)のBV-SERM Verified Ratingも広く活用されている。ロンドン証券取引所とファイナンシャルタイムスが運営するFESEも2001年7月から4goodとネーミングしたインデックスをスタートした。
調査機関の国際的なアライアンスの動きも活発である。PIRC(英国)、Kinder Lydenberg Domini (米国) 、AReSE (フランス)、 Centre Info (スイス)、 Caring Company (スウェーデン)、 SCORIS (ドイツ)、 Triodos Bank (オランダ)、 Michael Janzi Associates (カナダ)、 Avanzi (イタリア) 、ECodes (スペイン)、Stock at Stake(ベルギー)が構成メンバーとなり、世界のグローバル企業上位500社を共通の尺度で評価し、プロフィールを作成しようというThe Sustainable Investment Research International (SIRI) Groupの動きはその代表例である。

実践のポイント

(1)何が評価されるのか

それでは社会的責任投資における環境適合性、社会適合性の評価項目とはどのようなものであろうか。環境適合性については、環境方針、環境マネジメントシステム、製品・サービス、環境パフォーマンスなどが主たる評価項目である。社会適合性では、従業員との関係(雇用条件、労働衛生、機会均等、能力開発、従業員の経営参加など)、マーケットとの関係(公正競争、苦情処理、軍需等特定市場への関与など)、株主との関係(株主総会、投資家広報、役員報酬など)、途上国との関係(人権配慮、地域性配慮、原材料調達、社会貢献活動など)が主たる評価項目である。前述のFESE 4good Indexも持続可能性の観点からの環境問題への対応、ステイクホルダーとのポジティブな関係構築、人権問題への対応という3つを大きな評価軸として採用している。

(2)アンケートやインタビュー調査の重要性

日本企業も、もはやこうした動向に無関係ではいられなくなってきた。この数年、日本企業にも海外から環境適合性、社会適合性に関する調査票が数多く届くようになっており、アナリストが直接、インタビューに訪れるケースも目立っている。FESE 4good Indexでも、300社以上の日本企業が調査対象になっているという事実がある。ただ、これは世界の株式市場のなかで日本が占める地位を考えるとき当然であろう。サステイナブル投資を行おうとするファンド・マネジャーは、分散化効果を発揮する適切なポートフォリオを構築するために、ある程度の数の日本企業を組み入れることを必要するからである。
このようにアンケートやインタビュー調査に積極的に対応することは、SRI・企業格付対応の基本要件であるといえる。

(3)企業の情報開示に求められるもの

さらに社会的責任投資における企業評価に対して、企業は単に従来の「環境報告書」を発行するだけでは十分ではなくなっている。現在、Global Reporting Initiative(GRI)というNGO組織が国際的には環境報告書を巡る議論を主導している。全世界で通用するガイドラインを立案するということを目的に1997年秋に設立されたGRIは世界各地の企業、NGO 、コンサルタント、会計士団体、事業者団体等で構成され、1999 年3 月には公開草案を発表しパイロット・テストを経て2000年6 月に第一版ガイドラインを発表した。その後、社会全体が急速に変化している中でガイドラインも定期的に見直す必要があることから、2002年版のドラフトを公表し、既に意見募集も終えている。改訂作業では「経済的指標」、「社会的指標」の拡充が主眼となり、最高経営責任者の声明、最高意思決定プロセスにおける持続可能性の位置付けなどガバナンスに関わる内容が付け加えられたほか、「社会的指標」も大幅に拡大しているのが現状である。



GRIガイドライン2002年版のドラフトの大分類としての分野と側面(仮訳)
(出所)環境監査研究会

主な課題

(1)環境適合性についての課題

環境報告書については、近年、その発行数が増加している。しかし、その情報開示のあり方については、いくつかの共通の課題も散見される。 まず、情報開示の範囲についてである。わが国においても連結決算が重視されるようになった。しかし、環境情報の開示に当たっては、「本社のみ」、「主要事業所のみ」としている企業は未だ多い。グループ企業や取引先(サプライ・チェーン)までを視野に入れた情報開示が急務となっている。さらに、海外事業所などの環境情報開示も決定的に遅れている。「現地は現地に任せきりになっている」という状況であろうが、グローバリゼーションが進行するなか、海外進出が「環境問題の輸出」につながらないか環境NGO等は関心を強めており、グローバルな視点での環境マネジメント体制の構築と情報開示が求められている。 次に、ネガティブ情報の開示についてである。企業経営における環境リスクが増大しているなかで、事故や法令違反が企業ブランドを大きく損ねる事態が生じている。このため、ネガティブ情報を隠し、ポジティブ情報のみを強調する広報戦略がよく採用される。
しかし、こうしたやり方はいずれネガティブ情報が表面化した際には逆効果として作用する。事故や法令違反、苦情などの存在を積極的に開示し、再発防止や対策強化に向けて取り組んでいること自体を正しく伝えることが求められている。例えば、米国の大手製薬会社ブリストル・マイヤーズ・スクイブは、加えて、外部アドバイザー・グループを組織している。そのメンバーには、社会的責任投資の関係者、研究者、主要顧客、市民利害グループが含まれている。当該グループによって特に取り組みの強化が求められたことに、「バイオテクノロジーの生物学的安全性」、「環境効率」、「動物実験」、「環境中の残留薬物」、「製品のライフサイクル」の5つがあり、これら1つ1つについて、現況と取り組みの詳細が報告書では丁寧に説明されている。日本企業でも、外部環境監査の実施や環境報告書に外部からの声を紹介する事例は見られるようになってきたが、総じて双方向のコミュニケーションを実現しようとする姿勢は弱いといわざるをえない。
3番目は、パフォーマンス指標の活用である。環境経営の本質は企業活動に環境負荷をいかに軽減するかという点にある。このためには、環境負荷を定量的に把握する必要があり環境パフォーマンス指標の採用、それによる目標設定、進捗管理は必須の取組である。しかしながら、日本企業においては環境パフォーマンス指標を網羅的に活用し、積極的に情報開示している企業は、未だ大手企業の一部に限られているのが現状である。欧米では、業界で統一的な環境パフォーマンス指標を構築し、各社が先進企業を互いにベンチマーキングしてその改善を図るとともに、自社のポジションを率直に開示している事例がある。日本企業では、他社との優劣をあえて開示するということに抵抗感を有する傾向も強いが、「企業は競争によって鍛えられる」という本質を理解すれば、より積極的な姿勢が評価されることになるだろう。

(2)社会適合性についての課題

日本企業において、社会適合性についての情報開示は環境適合性にくらべて、なお一層遅れている現状にある。株式会社日本総合研究所では2001年から、日本企業の社会適合性についての情報開示の進展を図るべく「ソーシャル・レポーティング・イニシアチブ・ジャパン」と題する自主プロジェクトを大手企業15社とスタートさせている。このプロジェクトでは、日本企業の社会適合性についての情報開示のあり方について討議を重ねてきたが、そのなかでは以下のような代表的意見が明らかになっている。
○日本企業の現下の優先課題である構造改革と矛盾する側面が多いのではないか。
○ GRI、WBCSD、UNEP、ISOなどでガイドラインや規格化の動きがあり、それを見守るべきではないか。
○ 国内で開示項目の合意を作るべきではないか。
○ 日本の文化的背景を踏まえた「良い会社とは」のイメージを明確に持ったうえで情報発信すべきではないか。
○ 「取り組みを行っている」と明言することが、逆に「不十分」との批判を誘発するのではないか。
○ 現在の組織体制では、ある部署がこの事項を担当することは困難。社内調整も極めて大きなエネルギーが必要である。
○ 担当役員のあいだでも、情報開示の是非を巡って意見が食い違っている状況。
トップの明確な意思決定とリーダーシップがないと取り組めない事項である。 このように、日本企業においては、従業員との関係(雇用条件、労働衛生、機会均等、能力開発、従業員の経営参加など)、マーケットとの関係(公正競争、苦情処理、軍需等特定市場への関与など)、株主との関係(株主総会、投資家広報、役員報酬など)、途上国との関係(人権配慮、地域性配慮、原材料調達、社会貢献活動など)の側面において、必ずしも十分な配慮がなされてこなかった経緯があり、同時にそうした側面に関する情報開示について社内の合意形成や体制構築が課題となっているのである。

今後の展望

上述したような課題が存在するというものの、SRI・企業格付対応は、今後、環境経営における広報・コミュニケーション部門の最重要課題としての性格をなお一層強めることになるだろう。米国におけるエンロン、ワールド・コムの破綻を引き金として、企業のカバナンスに対する重視姿勢は、資本市場、製品市場、労働市場のいずれにおいても急速に高まりつつある。
同時に、社会的責任を全うしている企業ほど長期的に優れた企業価値を実現するという仮説も徐々に支持されるようになってきている。既に個々の企業においては、企業の環境パフォーマンス(Corporate Environmental Performance; CEP)あるいは社会的責任に関するパフォーマンスCorporate Social Performance; CSP)と財務パフォーマンス(Corporate Financial Performance; CFP)との相関は少なくともマイナスではなく、プラスであるとも考えられるケースも多いことが先行研究に関する事例調査で示されている。
さらに、社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオのパフォーマンスは、従来のポートフォリオと相違があるか、相違があるならばそれはどのような違いか、なぜ相違が生じるのかというテーマを巡っては、多くの研究や議論がなされている途中であるが、最近の趨勢としては以下のような認識が徐々に共有されるようになってきている。
○ 社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオのリスクを勘案したパフォーマンスは、従来の株式ポートフォリオと比べて劣ってはいない。
○ 短期的(1~2年)には、社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオのリスクを勘案したパフォーマンスは、従来の株式ポートフォリオと比べ、かなりばらつきが大きいという傾向がある。
○ 投資傾向(成長スタイルや産業、地域といった顕著なバイアス)が、パフォーマンスの違いの大きな要因である可能性がある。
 社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオのパフォーマンスについて、最近発表された調査レポート は次のように結論付けている。
○ リスクとリターンのトレードオフという観点から見ると、社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオと従来の株式ポートフォリオとの長期的な相違はわずかであり、多くの場合、社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオの方がわずかに優れているといえる。
○ 短期的には、両者のリスク/リターン・レシオ の相違は、かなりばらつきがある。
○ ポートフォリオの絶対的リスクに関していえば、社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオと従来の株式ポートフォリオとの違いは、たいてい小さなものである。
○ ポートフォリオの相対的リスクに関していえば、社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオのリスクは大きい。例えば、社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオのトラッキング・エラー は3%以上であることが多い。
市場の代表的な株価指数と社会的責任投資の考え方に基づく株価指数の期間収益率平均(リターン:縦軸)と期間収益率変動率(リスク:横軸)との状況を1996年6月から2001年6月の期間で測定して比較すると、社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオが、多くの場合、市場ポートフォリオより大きなリスクを負担しながら、市場ポートフォリオより大きなリターンを実現しているという意味での合理性を有しているとの実証研究結果もある。
このように、世論の関心が企業社会責任に注がれ、同時に企業社会責任のパフォーマンスと企業価値とのあいだの正の相関がより実証されてくれば、SRI・企業格付の位置付けは自ずと大きくならざるを得ない。フランスでは、2001年5月に経済法が改正され、上場企業に対して自らの事業に関する社会ならびに環境側面での影響を報告することが義務づけられた。環境側面では、例えば、水資源、鉱物資源、エネルギーの使用や土壌、大気、騒音、臭気、水域への環境負荷、生態系への影響、環境対策の認証、環境マネジメント、環境会計、環境リスク、罰金などの情報を含んでいる。
○ 短期的(1~2年)には、社会的責任投資の考え方に基づく株式ポートフォリオのリスクを勘案したパフォーマンスは、従来の株式ポートフォリオと比べ、かなりばらつきが大きいという傾向がある。

ケーススタディ/Oekom Research社の企業格付

ドイツのミュンヘンにあるイーコムリサーチ社は、有力グローバル企業の環境面、社会面での取組を産業別に調査し、その結果を格付けレポートとして金融機関などに提供している。同時に、産業別のレポートを発行する際には、最上位の格付けを獲得した企業名を公開している。
同社の環境適合性評価は、1.環境保全のコストと効果、2.環境リスクと法令・規制の遵守、3.環境マネジメント、4.環境配慮型製品・サービスの開発、5.環境効率性の状況に及ぶ。また社会適合性評価では、1.社会・倫理方針と管理体制、2.社会・倫理監査と報告書発行、3.従業員の経営参加、4.労働時間、5.雇用の安定確保、6.従業員の能力開発、7.待遇、8.安全衛生、9.機会均等、10.未成年者就労、11.下請先、取引先との関係、12.顧客との関係と製品責任、13.地域社会への関与、14.発展途上国での事業、15.グローバル化における固有文化への配慮、16.苦情、17.汚職・詐欺、18.係争、罰金、19.研究開発ガイドラインとなっている。
日本企業では、既に東証1部上場企業45社の格付レポートが発行されている。2002年5月に発表されたオフィス・家庭電気機器の格付で世界の16社の評価で、リコーがB+、東芝がBと最上位の評価を受けている。第3位はスウェーデンの家電メーカーエレクトロラックスという結果であった。 


 
3番目は、パフォーマンス指標の活用である。環境経営の本質は企業活動に環境負荷をいかに軽減するかという点にある。このためには、環境負荷を定量的に把握する必要があり環境パフォーマンス指標の採用、それによる目標設定、進捗管理は必須の取組である。しかしながら、日本企業においては環境パフォーマンス指標を網羅的に活用し、積極的に情報開示している企業は、未だ大手企業の一部に限られているのが現状である。欧米では、業界で統一的な環境パフォーマンス指標を構築し、各社が先進企業を互いにベンチマーキングしてその改善を図るとともに、自社のポジションを率直に開示している事例がある。日本企業では、他社との優劣をあえて開示するということに抵抗感を有する傾向も強いが、「企業は競争によって鍛えられる」という本質を理解すれば、より積極的な姿勢が評価されることになるだろう。

参考文献・情報ソース

足達英一郎,「拡大する「環境」と「金融」の接点-エコファンドの未来-」,『資源環境対策』, Vol.36, No.4, 2000, pp.33-37
足達英一郎,「日本企業の環境情報開示の進展とエコファンドの果たした役割」,『資源環境対策』, Vol.37, No.5, 2001, pp.43-48
環境省,『金融業における環境配慮行動に関する調査研究報告書』, 2002

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