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「社会に対する責任」という企業経営の視点(4) 競争優位に導く戦略の要

出典:日刊工業新聞 2003年1月27日

-CSRと企業コミュニケーション-

CSR重視の経営戦略は、優秀な人材の確保、ブランドイメージの形成、リスクマネジメントひいては株価対策となる。こうした文脈のなかで、先駆的にCSRに配慮した企業行動を採っていく、それによって競争優位を確立する戦略を採るところも生まれてきている。この際、企業にとって重要になるのが、顧客、NGO、従業員、投資家などとのコミュニケーション活動である。
その理由は、企業に要請されるCSRの内容は、地域によっても、時代によっても変わってくる。したがって、企業を取り巻く関係主体の問題意識に積極的に耳を傾け、的確な取組と成果を説明することが要になるからである。
CSR重視の経営戦略における重要なコミュニケーションツールとしては、まず企業の報告書がある。わが国でも、環境報告書を発行する企業は年を追って増え続けている。同時に最近では、環境以外の広義の企業の社会に対する責任と考えられる項目を網羅するものも増えてきた。これらは、サステイナビリティ報告書と呼ばれることが多い。英国のネクストステップ・コンサルテイング社は世界の企業の関連報告書をデータベース化して提供しているが、これまで収集できた3,590冊の報告書のうち、社会性報告書として分類できるものが76冊、サステイナビリティ報告書として分類できるものが149冊に達している。
環境報告書の守備範囲の拡大という傾向は、大きな潮流となっており、これまで環境報告書作成のガイドラインを発行し世界の動きをリードしてきたNGOグローバル・レポーテング・イニシアチブ(本部:アムステルダム)も昨年夏に発行した新しい報告書ガイドラインで、経済的パフォーマンス指標、環境パフォーマンス指標のほかに、労働慣行や人権、および消費者、地域、その他関係主体に影響を与える広範な課題に関する社会的パフォーマンス指標を含む構成で報告書を作成するよう奨励を行っている。
さらには報告書作成にあたって、顧客、NGO、従業員、投資家などとの直接対話もCSR重視の経営戦略の重要な鍵となる。米国の製薬メーカーでは、主要顧客、研究者、市民利害グループ、社会的責任投資の関係者をメンバーとするサステイナビリティ報告書の外部アドバイザー・グループを組織し、当該グループによって特に取組の強化を求められた項目について、現況と詳細を報告書で丁重に紹介するという工夫を行っている。これによって取組や姿勢を情報発信する報告書が、同時に社外の関係主体の反応を探るセンサーとして機能しているのである。企業はその結果を新たな課題として獲得し、更なる取組の強化を図ることができる。こうして先行企業は確実に競争優位を確立していっている。
GRI奨励する社会的パフォーマンス指標 労働慣行と公正な労働条件
雇用 労使関係 安全衛生 教育研修 多様性と機会
人権 方針とマネジメント
差別対策 組合結成と団体交渉の自由 児童労働 強制・義務労働 懲罰慣行 保安慣行 先住民の権利 
社会
地域社会 贈収賄と汚職 政治献金 競争と価格設定 
製品責任
顧客の安全衛生 製品とサービス 広告 プライバシーの尊重
(出所)GRI報告書ガイドライン2002

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