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「社会に対する責任」という企業経営の視点(3) CSR戦略株価を左右

出典:日刊工業新聞 2003年1月20日

-社会的責任投資の拡大-

「CSRは企業にとって利益の源泉となる」という考え方が支持されるようになり、CSRと企業業績の正の関係性が指摘されるようになると、資本市場にもひとつの潮流が生まれるようになった。それが「社会的責任投資(ソーシャリー・レスポンシブル・インベストメント)」の拡大である。欧米では、従来から「倫理的投資」と呼ばれる行動があった。宗教団体や学校など倫理観に敏感な組織が投資を行う場合に「倫理的に問題があると判断される業種や企業を投資対象としない」とするような例である。のちにこうした投資行動はベトナム反戦運動やアパルトヘイト反対運動にも応用された。それでも「倫理的投資」は金融界では、特別の価値観を有する人々の行動もしくは反企業キャンペーンの行動と見なされ、重要な存在とは見なされて来なかった。
しかし、積極的な情報開示、誠実な顧客対応、社員の育児・介護への配慮、男女間の機会均等、環境への配慮、社会貢献活動への関与、NGO/NPOとの協力・連携、貧困や紛争解決などの世界的諸課題解決への行動などが企業の業績を左右するとなると、こうした項目の取組の多寡や成果を手掛かりに投資対象とする企業を選定する「社会的責任投資」が拡大していくというのは、確かに自然な流れといえるだろう。
この分野の著名ファンドマネジャーであるラッセル・スパークス氏の推計によると、2001年の世界の社会的責任投資の資産残高は、二兆七千億米ドル程度と見られている。このうち最大のシェアを占めるのは米国で、英国がそれに続いている。ただし、その拡大テンポでは英国の伸びが顕著であり、同氏の推計では97年から01年の4年間で約10倍にもなっている。
その背景には、機関投資家が「企業のCSR軽視は企業リスクに直結する」という認識に立って次々と社会的責任投資の手法を採用し始めているという事実がある。2000年7月に英国の年金法が改正され、「投資判断の際に、対象企業の環境、社会配慮を考慮に入れているか」についての開示が義務づけられたことが、多くの年金基金の変化をもたらした。また、英国保険協会は2001年11月に「社会的責任投資に関する情報開示ガイドライン」を投資の対象になる企業に対して示し、自らが環境、社会配慮を考慮に入れて投資行動を行っていく姿勢を明確に示した。
わが国でも、エコファンド(環境保全のための優れた取組を行う企業から投資対象を選定した投資信託)の誕生によって、社会的責任投資の嚆矢がひらかれた。CSR重視の経営戦略は、企業の株価対策の重要な柱となり、同時にIR活動の重要なポイントにもなっている。 
世界の社会的責任投資の残高推計(2001年)/10 億ドル
米国 2332.0
英国 326.6
カナダ 31.4
その他欧州 17.6
日本 1.9
オーストラリア 1.1
Total 2710.6
(出所)ラッセル・スパークス氏の推計による

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