コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

メディア掲載・書籍

掲載情報

新たなビジネスモデルを構築する「モバイルコンピューティング」
Part2:データ通信サービスについて

出典:日刊工業新聞 2001年10月

(1) 総論

 今や世界が「iモ―ドに追いつき追い越せ」というぐらい、携帯環境下でのデータ通信はわが国の独壇場になった感がある。加えて回線や端末の高速化、あるいは音楽・映像等のコンテンツの拡充、ビジネスユースとしてのモバイルインフラの整備により、ますますデータ通信が私たちの生活や企業活動においてプレゼンスを増してきた。そうしたなか現在のデータ通信の動きの中の変化、そして将来の展望を垣間見たい。  

(2) 携帯電話のデータ通信サービスとは?

 わが国の携帯電話はこの2年のiモ―ドなどのデータ通信サービスの導入により、一気に世界のトップに踊り出た。最近の筆者のクライアント(電子部品メーカー)談となるが、同メーカー営業部長が開発部長と、同社の主軸商品である電子部品を当時の携帯電話用に開発すべきかどうかを真剣に議論したという。10年前、まだショルダー式の携帯電話だったとき、誰が電話ボックスの中で携帯電話を使っている若者の姿をイメージできただろうか?

 今年8月末のデータ通信サービスの契約数は、iモ―ドが2,689万、EZウェブが841万、J-スカイが826万で合計4,355万(TCA調べ)。携帯電話の契約数が6,471万であるから、その比率は67%にも及ぶ。同サービスのどのような機能にそれほど魅力があるのか?

 データ通信の主な機能には、まず高速通信機能がある。通常の通話サービスもこれからはIP(インターネット・プロトコル)電話になっていく。画像・映像配信は、ケータイのブロードバンド化により一層普及していくだろう。ブルートゥースにより2Mbps近い高速環境で、私たちは情報家電とも簡単にインタフェースをもてるようになった。ICカードの認証・決済機能を組み込めば、これからはパスポート代りになろう。セキュリティーがしっかりしているので、ポケットに収まるATMの役目もあり俄然生活必需品へとモバイル端末を押し上げる。一方で、エンタテイメント・コンテンツとして音楽やテレビ放送も受信できるようになる。TV電話はさらなるキラーコンテンツとなろう【図表1】。 
  

【図表1】 データ通信の主な機能 

 

(出所)日本総合研究所ネット事業戦略クラスター(現ICT経営戦略クラスター) 
 
 これらは、世界初の3G(第三世代)ケータイとなった、期待のFOMAの今年10月におけるスタートで、ほぼ同様のサービスが楽しめる。2GHz仕様の携帯電話のパケット受信速度が、現在の3倍の384kbpsから2Mbpsともなれば、データ通信サービスはより本格化しよう。
 確実にデータ通信の割合の増えると見られる次世代携帯電話のサービス開始は、わが国では先行のNTTドコモに加え、来年にかけJ-フォンとKDDIが揃う予定だ【図表2】。 
  

【図表2】 データ通信の割合が増える次世代携帯電話のサービス開始予定 

 

(出所)日本総合研究所ネット事業戦略クラスター(現ICT経営戦略クラスター)   

(3) iモ―ドはどのように利用されているか?

 筆者は毎年のように海外調査(通信、IT分野)のためいろいろな国へ出掛ける。そして、成田に帰国した際に驚くことがある。飛行場に着陸するや否や日本人乗客が一斉に携帯電話の電源を入れ、eメールをチェックし始める。こんな光景は海外のどこでも経験したことはない。iモ―ドなどのデータ通信が欧米以上に日常となっている象徴的な光景だ。

 iモ―ドの出現により、私たちは通信手段の統合が1つの端末で行えるようになった。いわばモバイル分野でのワンストップ環境が実現されたわけだ【図表3】。

 最近では「高速iモ―ド」により、現行速度(9.6kbps)が最大で40倍(384kbps)となった。また、Java技術をべ-スにした「iアプリ」を使えば、モバイルコマースはセキュアな環境のもと、実用性が増してこよう。PC上のeコマースは、今後モバイルコマースとなって再び大きな期待が寄せられる。
 iモ―ドのようなデータ通信分野でサービスの多様化にともない携帯端末も変わる。たとえば、音楽配信サービスをフル活用するための音楽専用の受信端末に加え、P2P(ピア・トゥ・ピア:仲間どうし)と呼ばれる通信により音楽配信端末なども普及してこよう。 
  

【図表3】 iモ―ドによる通信手段の統合 


(出所)日本総合研究所ネット事業戦略クラスター(現ICT経営戦略クラスター)  

(4) なぜPHSが企業ユースで注目されるのか?

 PHSの今年8月末の契約数は570万(TCA調べ)。携帯電話契約数との比率では9%に過ぎないが、データ通信用途に占めるPHSの割合は1998年から急増し、1年半後の2000年初では、通話回数で19%、また通話時間で50%弱に達している。

 これは、「PHS=64kbpsデータ通信」という図式により、PHS通信サービスは、消費者ユースというよりも営業担当者などの企業ユースとして受けているからだ。今後は、あらたなモバイルインフラの拡充により、同インフラを自社で保有せず、余計な費用や時間をかけずに、自社コア・コンピテンス(中核能力)強化に、持てる経営資源を傾斜配分できるようになってきた。

 たとえば、MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)のサービスを用いる。英ヴァージン・モバイルなど欧州で活発になってきた動きだ。日本通信はDDIポケットのPHS網の卸売りを受け、安全なモバイル通信実現のための支援サービス「b-mobileプラットフォーム」を開始。これからVPNや専用線接続で、モバイル端末から企業内情報システムまでのコミュニケーション環境が提供される。遠隔管理が可能な「マシン・ツー・マシン」とは?

 これまでの通信の基本は、人と人とのコミュニケーションであった。今、パケット通信で遠隔管理が可能な「マシン・ツー・マシン」が注目されている。

 自販機などの無人店舗に設置した専用PHS端末と、それを管理するセンター間にてPHS通信を利用し遠隔監視を行う「テレメタリングサービス」が登場した。これにより無人店舗の売上高や在庫状況を収集することができる。このほか貨物集配管理、ガス・電気の検針メーターによる遠隔モニターなども行える。
 MCPCの今春の予測(前出)では、同サービスの利用者数を2001年度10万人から2004年度には110万人に増加するとしている。いよいよデータ通信の本格化がこうした分野においてもスタートを切った。

メディア掲載・書籍
メディア掲載
書籍