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「雇用再生 戦後最悪の危機からどう脱出するか」 著者 インタビュー

  • 雇用再生 戦後最悪の危機からどう脱出するか
    雇用再生 戦後最悪の危機からどう脱出するか
    著者:山田久
    日本経済新聞出版社/2009年2月/¥1,680(税込)

このたび、調査部 ビジネス戦略研究センター所長/主席研究員 山田久編著による「雇用再生 戦後最悪の危機からどう脱出するか」を日本経済新聞出版社より刊行いたしました。本書をお読みいただくためのポイントや、執筆の背景などについて、山田よりご紹介させていただきます。

◆著者からのメッセージ

昨年秋以来わが国経済は未曽有の危機に直面し、雇用問題が大きな焦点となっています。とりわけ、今回は「派遣切り」という言葉がマスメディアで生み出されたように、非正規労働者が人員削減の主な対象になっています。そうしたなか、これまでの労働市場の規制緩和を批判し、構造改革路線を否定する論調が勢いを得ています。

しかし、製造現場で派遣労働が増えることは、経済変動が大きくなっていることへの対応から不可避な現象であり、そもそも製造派遣解禁前から構内請負として行われていたものが振り替わったものです。問題の本質は、非正規労働の存在そのものではなく、その労働者保護の不徹底や正社員との大き過ぎる処遇格差にあると考えられます。


さらに歴史を紐解けば、派遣・請負といった「間接雇用」は戦後ほぼ途絶えることなく存在してきたのが実情であり、一言で正社員といっても終身雇用・年功賃金が当てはまったのは一部に過ぎなかったことが分かります。「正社員中心システム」という幻想を捨てることが、正規・非正規問題へのあるべき対処法を考える出発点になると思われます。


また、今回の経済・雇用危機の背景として、外需依存・自動車依存という産業構造の歪みを見逃せません。それは、超低金利政策を背景とした円安・海外経済のバブルのもとで、非製造業分野での規制緩和の遅れが、生産要素を輸出型製造業に偏在させた結果であると捉えることができます。その意味で、産業面での構造改革は行き過ぎどころかなお道半ばであると言えるでしょう。


つまり、規制緩和や構造改革路線そのものが必ずしも間違っていたわけではありません。ただし、そこに「公平性」や「保障性」といった社会システムの安定の観点が欠落していた点に問題があったと考えられます。そうした見方に立って、本書では、市場原理に則った産業構造転換は進めるべきとしつつ、非正規労働者のための安全網の整備や職業訓練システムの再構築、正規・非正規の壁を低くする労働市場の新しい仕組みの創設等、採るべき政策についてできる限り包括的・具体的に提案を行っています。

人材活用や労働問題のみならず、日本の経済社会の今後に関心のある方々に広く、是非とも本書を一読頂きたく思っております。

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