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地域再生のために自治体が取り組む課題と民間手法の有効活用 第3回 自治体再生にむけての官民パートナーシップのあり方

2007年12月01日 日吉淳


夕張市の財政破綻に象徴されるように、自治体の財政悪化に歯止めがかからない状況である。このまま進めば数多くの自治体が財政破綻する可能性も否定できない。そもそも、どこに問題があるのか、どうすれば問題が解決するのかなど、主席研究員の日吉淳に話を聞いた。


ここまで自治体の再生のためには、企業の手法が大いに活用できるというお話でした。その一方、民間企業と連携して取り組むことも考えられると思いますが・・・。

自治体と企業が連携する手法としてPFI (Private Finance Initiative)があります。PFIは、学校、病院の建替やゴミ処理場の建設から刑務所の運営まで多岐に亘る領域で導入され、すでに全国で既に200件以上の事例があります。PFIの運営がはじまってからまだ数年であるため、サービスの質などの定性的な効果の検証はなされていませんが、平均して20%程度のコスト削減が達成できており、サービス面では図書館などでは入場者数が数10%増えたといった事例もすでにあります。

サービスを提供するにあたり、組織ごと民営化するという手法もありますね。

PFIのように、自治体が企業のノウハウ・能力を活用するということと、サービスを提供する組織そのものを民営化するのとは別の話です。PFIでは、サービスの企画・立案・監視(モニタリング)の機能は自治体が担い、サービスの提供は企業が担うという役割分担を明確にしてサービスを提供しています。

なぜ役割分担をした方がよいのでしょうか。

 過去、自治体は自らのサービス提供に対し、自ら評価を行っていました。しかし評価対象が身内であるため、どうしても課題や問題点の認識が甘くなっていました。それを防ぐため、チェック機能が働き、よい緊張関係が生まれる民間企業との役割分担は有効です。 特に行政サービスを民営化した場合は、企業は利益優先で運営しがちであるため、サービスの質が低下する可能性があります。そこで自治体の監視=モニタリングという機能が重要になってくるのです。
 たとえば、自治体が図書館事業を企画・立案し、本の貸し出し業務を企業に委託するとします。このとき市民への対応は悪くないか、本は揃っているかなど、当初の企画どおりにサービスしているかを自治体がモニタリングすることで、図書館サービスの適正が保たれるのです。
 役割分担にあたっては契約方法も重要なポイントです。かつて民間企業へ委託するときは「役務調達契約」であり、あくまでも業務を担う不足人員を調達するという主旨でした。官が上で民が下という発想のもと、自治体が計画・設計した業務を民間企業は単に代行している内容になっていました。しかし今後のパートナーシップにおいては、途中経過やサービスの提供方法自体は民間企業に任せ、最終結果のみを自治体サイドの責任に求める「サービス調達契約」にすべきです。こうすることで民間企業の創意工夫を引き出すことができ、サービス向上へと繋がっていくのです。

PFIにおいて、自治体のパートナーである企業が仮に倒産したらどうなるのですか。

 第3セクターの場合、企業と民間の共同出資というだけで、誰が責任を取るかといったことが曖昧になっていました。その結果、第三セクターが倒産した場合、自治体だけが責任を取って債務を処理するという状況が多々見られました。それに対しPFIという手法では、その役割・責任が非常に明確になっており、破綻した場合の処理方法まではっきりと契約で示されていますので、自治体だけが責任をとるということはありません。
 PFIは自治体にとってメリットが多い手法ですが、課題がないわけではありません。現在のPFI事業では自治体が割賦で施設を買い取る形態が主流になっており、民間資金を活用して財政支出を平準化しています。しかし、現状の低金利が続かない場合、将来的には金利上昇により大きな負担増になるリスクを抱えており、不安定な要素があるのも確かです。

懸念点があるにも関わらず、自治体がPFIに期待を寄せているのはどうしてですか。

実際のPFIを推進する中で面白いのは、自治体職員が民間企業の人たちとともに仕事をすることによって刺激を受け、行政の意識改革が進むことです。実はこれこそ大きな意味を持っており、改革の原動力になるのではないかと思っています。
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