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オピニオン

CSRを巡る動き:中期経営計画に女性活躍推進を位置付ける企業の増加が意味すること

2016年01月04日 ESGリサーチセンター


 2012年12月に発足した第二次安倍内閣以来、「女性活躍」は政府の経済政策の目玉の一つに位置付けられ、様々な施策が講じられてきました。その最大の成果の一つが2015年8月に成立した女性活躍推進法(正式名称「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)と言えるでしょう。これにより、労働者301人以上を雇用する全ての企業は、女性の活躍推進に向けた数値目標を含む行動計画を、2016年4月までに策定することが義務付けられました。

 女性活躍推進法の成立に伴って、女性活躍に対する企業の関心が高まっています。しかし、同時に、法律への対応に向けた企業の姿勢には大きく二つのスタンスが混在しています。一つ目のスタンスは、法令違反を問われないよう、粛々とこれに準備を進めようというスタンスです。これに対し、二つ目のスタンスは、法令遵守という目的を超えて、女性の活躍を経営上の重要な課題と捉え、プラスの経営効果に結び付けることを狙って取り組もうというスタンスです。

 そして今、後者のスタンスをとる企業が徐々に増えてきています。東証一部上場企業が発表した中期経営計画を日本総合研究所が独自に調査したところ、その中に女性活躍を位置付ける企業が大幅に増えていることが明らかになりました。具体的には、2007年から2009年の間に中期経営計画において女性活躍推進を述べている企業はわずか13社、2010年から2012年の3ヵ年でもわずか19社だったのに対し、2013年から2015年の3ヵ年では90社へと急増しています(注)。90社の業種別内訳は、銀行業が最も多く32社となっており、建設業10社、サービス業9社、小売業8社がこれに続いています。銀行業については、「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」など、業界横断的な取組みも影響していると考えられます。全体として、従前より女性従業員が多いとされる非製造業が上位に来る傾向が見られます。

 もちろん、中期経営計画の中で女性活躍が述べられているからといって、ただちに経営上の課題として捉えられていることを100%意味するわけではありません。しかし、多くの企業にとって、中期経営計画は、全社的な経営計画を示した最も重要な文書の一つです。女性活躍を真に進めようとすれば、現場レベルでの取組みだけでは限界があり、例えば全社的な働き方の見直しなど、難しい組織改革を粘り強く行うことが求められます。企業としての軸がぶれないようにするためにも、中期経営計画の中に位置づける意味は大きいと言えます。実際にプラスの経営効果が実感できるようになるまでには、相応の時間を要すると考えられますが、女性活躍を経営上の課題と捉えてこれを推進するか否かが、中長期的には企業業績にも大きな違いとなって表れてくる可能性があります。

(注) 2015年10月末時点において東証1部に上場している全企業を対象に、2007年1月から2015年11月末までに発表された中期経営計画の内容を調査したものである(本稿執筆時点では集計できないことから2015年12月分は集計に含まれていない。)。
 具体的には、TDnetにおいて開示された「その他適時開示書類」の表題に「中期経営」または「長期経営」が含まれるものを抽出した上で、中期経営計画の発表又は改定についての発表資料であることを目視により確認し、かつその内容において女性の活躍推進が述べられているもの集計した。なお、中期経営計画は通常3ヵ年程度の計画期間であることから、本文中では3ヵ年毎に中期経営計画を発表した企業の数を記載している。