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「必殺技」願望は止めよう

2015年11月16日 石野幹生


未来に正解はあるのか?
 「このやり方で未来の正解が分かるのですか?」
 「未来の答えだけを教えてもらうことはできないのですか?」
 未来洞察についてご相談いただく企業の方の中にはこのように尋ねられる方がまれにいらっしゃいます。そもそも未来洞察は未来を正確に予測するための方法論ではなく、不確実な未来への構えを作るための方法論なので問い自体に意味が無いのですが、それでも未来のことに対して正解を求めたがるという思考は程度の差はあれ一定以上の割合で存在するようです。また筆者の印象ではこのような思考は若い人や女性では少なく、一定の年代以上の男性に多い印象があります。ではなぜこうした人たちは未来の正解を求めたがるのでしょうか?
 新たな技術開発や新規事業開発などには不確実性がつきものです。「確実に成功する新技術」や、「確実に成功する新規事業」を開発することはできません。逆に、「確実に失敗する新技術」や「確実に失敗する新規事業」については想定可能です。つまり、未来の成功確率を高めるには、未来の市場において受容され得るか、ビジネスとしての収益性を期待できるかなどの確からしさを高めるとともに、懸念される失敗要因リスクを下げることしかできません。
 一方で、技術開発や新規事業開発などのリスクを伴う投資が必要な企業活動に対しては、投資家から説明責任を求める声が高まっているという側面もあります。また、「正解を求める一定の年代以上の男性に多い」と書きましたが、年を重ねるとともに企業の中での役割・責任が増えるにともなってリスクがとりづらくなっているということもあるでしょう。
 このように、失敗を許容しない雰囲気が少しずつ広がってきたことが未来に対して正解を求める思考の背景にあるといえそうです。しかし、筆者はそれ以外にまったく別の視点もあるように感じています。それは、失敗を恐れるから正解を求めるのではなく、未来に対して必殺技・必勝法があるという思い込み、無意識の刷り込みがあるのではないか?というものです。

おじさんは必殺技が好き?
 ・子供向けテレビ番組の戦隊ヒーローシリーズなどで、主人公がどんなに苦境に陥っていても絶対に勝利する「必殺技」
 ・スポーツ中継などでよく聞かれる、「必勝パターン」、「勝利の方程式」
 ある一定年代以上の男性は幼少のころから日常的にこれらのフレーズに多く接してきたという人が多いはずです。そしてこれらのフレーズがこれだけ普通に定着しているということは、このような様式的なものを暗黙的に好む人が多かったからと考えることもできそうです。このことは、勝負の世界においては「必殺技」「必勝パターン」「勝利の方程式」が存在するはずだという思い込み・刷り込みにつながっているといえるでしょう。もしかしたら、これが拡大解釈されて、ビジネスの課題や不確実な未来のことも確実な方向、すなわち正解を導く必殺技があるはずだという、必殺技願望になっているのではないでしょうか。そう考えると、これらのフレーズにあまり接してこなかった若い人や女性ではこのような必殺技願望が少ないというのにも合点がいくように思います。

「必殺技」ではなく、新たな気付きを探索しよう
 正解を導く「必殺技」というのが、将棋などのゲームにおける「定石」のようなものや、ビジネス書やセミナーなどのタイトルに良く見られる「○○の法則」のようなものだとすると、これらは言うまでもなく限られた条件における過去の経験の蓄積から確率的に得られたパターンでしかありません。ビジネスの世界は競争環境や競争のルール自体が変化することが珍しくないので、このように限られた条件から導かれた「必殺技」が必ずしも高い再現性を持つとは言えないでしょう。新技術開発や新規事業開発など、過去の経験の蓄積がないテーマであればなおさらです。
 ビッグデータ解析やAI技術の進化で未来の正解を予測可能になるのかもしれませんが、今のところ未来の正解を導く「必殺技」はありません。しかし、これまでの知識や経験から得られる未来の見立てとは異なる新しい気付きを探索することは未来洞察を行うことによって可能です。そしてビジネスを刷新していく上では、ユニークさを持たない正解に依拠するよりも、ユニークな新しい気付きを元に自ら創造していくことがより重要だと考えています。「必殺技」願望を止めて、新たな気付きを探索してみませんか。

以上


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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