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CSRを巡る動き:2020年以降の温室効果ガス削減に向けて、社会全体のエネルギー消費を見直すとき

2015年06月01日 ESGリサーチセンター


 2015年12月に開催されるCOP21(第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に向けて、日本政府は4月30日、2030年の温室効果ガス排出量を「2013年度比26%削減」とする目標の原案を中央環境審議会・産業構造審議会合同会合において公表しました。今後、与党内の調整等を経て、6月上旬にドイツで開催予定の先進7カ国首脳会議(サミット)までに最終決定すると報じられています。

 一方、諸外国では4月末時点で既にEU28カ国とそれ以外の地域の7カ国が、2020年以降の削減目標に関する約束草案を国連に提出しています。EUは「2030年までに少なくとも40%削減(1990年比)」、米国は「2025年までに26~28%削減(2005年比。1990年比では14~16%削減)」、ロシアは「2030年までに25~30%削減(1990年比)」、スイスは「2030年までに50%削減(1990年比)」という目標を掲げました。今回公表された日本の削減目標は「基準年」を2013年度としていますが、2013年度の日本の温室効果ガス排出量は直近5ヵ年のうちで最大の14億800万t-CO2でしたから、1990年度の排出量12億7,000万t-CO2と比べると削減割合は18%程度に過ぎません。このため、他国の目標と比較すると必ずしも意欲的ではないとする見方もあります。

 さらに、今回の目標設定の前提となる2030年の電源構成(エネルギーミックス)に対しても、気候変動対策としての不十分さを指摘する声がNPO等から挙げられています。4月28日に経済産業省総合資源エネルギー調査会・長期エネルギー需給見通し小委員会が示した電源構成によれば、原子力20~22%、再生可能エネルギー22~24%、LNG27%、石炭26%、石油3%程度となっています。一方、諸外国の再生可能エネルギーの導入比率目標を見ると、ドイツは電力の総消費量に占める再生可能エネルギーの割合を2025年までに40~45%、2035年には55~60%とする意欲的な目標を掲げています。フランスでも、2030年の再生可能エネルギーの導入比率目標を32%としました。また、EUでは2030年までに再生可能エネルギーの導入比率を最低27%とする目標を掲げましたが、この値は熱利用や自動車など交通燃料を含むエネルギー消費量全体の目標値です。EUのホームページのQ&Aには、電力部門における再生可能エネルギーの割合は最低でも45%以上にすると記載されています。今後、日本が諸外国と肩を並べて気候変動対策に取り組むためには、再生可能エネルギー導入比率のさらなる引き上げが求められるでしょう。

 再生可能エネルギーの導入比率を引き上げるためには、再生可能エネルギーによる発電量を増やすことだけが唯一の方法ではありません。長期エネルギー需給見通し小委員会の2030年度の電力需要見通しでは、総発電電力量は10,650億kWhに増加(2013年度の実績値は9,063億kWh)することを前提としています。仮に総発電電力量自体をもっと削減することができれば、発電単価の高い石油火力やベースロード電源の石炭火力などの使用を減らすことにつながり、結果として再生可能エネルギーの導入比率が高まることが期待されます。総発電電力量を削減するためには革新的な省エネルギー技術開発を一層促進させ、社会全体のエネルギー消費量を低減させることが必須でしょう。もちろん、産業界では相当の省エネが進んでおり、今後は、国民一人一人にも少しでもエネルギーを使わない暮らし方を選択して貰うことが必要になってくるのではないでしょうか。

 COP19で日本政府は、「2020年までに2005年度比3.8%減(1990年度比3.1%増)」という低い目標を示したことで国際的な批判にさらされました。再び批判を受けないようにするためにも、原案の目標で十分とは言い切れません。温室効果ガス排出量のさらなる削減に向けて、社会全体のエネルギー消費のあり方を改めて見直すべき時が来ていると考えられます。
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